平成31年度税制改正大綱 措置法上の「みなし大企業」の範囲の見直し

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平成31年度税制改正大綱 措置法上の「みなし大企業」の範囲の見直し

【参考】「平成31年度税制改正大綱」ニュース >政策 >平成31年度税制改正大綱
【参考】《速報解説》 中小企業向け各租税特別措置等における「みなし大企業」の範囲見直し~平成31年度税制改正大綱~ 

【参考】国税庁タックスアンサーNo.5800 一定の大法人等の100%子法人等における中小企業向け特例措置の不適用について

【参考】国税庁HP『令和元年度 法人税関係法令の改正の概要』

目次

1.概要

与党による平成31年度税制改正大綱が、先週12月14日に公表されました。詳細な制度概要及び改正内容及びいつからの適用か等は、上記参考資料のうち、【参考】国税庁HP『令和元年度 法人税関係法令の改正の概要』第1編 法人税法等に関する改正🔗P5~P8が最もわかりやすいと思います。今回は、当該箇所の解説は範囲が広くなることから割愛しています。

さて、当事務所の顧客においても、当該改正の影響を受ける法人が存するものと思われます。 

 まず、第一に理解が必要なのは、中小企業者を規定するものに、法人税法と租税特別措置法があり、租税特別措置法上の中小企業者の定義は、措置法の特例の適用がある法人かどうかを判定する際のメルクマールであるということです。また、今回は法人税法における中小企業者の範囲の改正は行われていません。

 本稿では、租税特別措置法に規定する「みなし大企業」の範囲の見直しについて、重要と思われる箇所についてかいつまんでみたいと思います。特に、大法人の子法人かつ資本金が1億円以下の法人が、100%所有する孫法人についての考察が中心になっています。

2.現行の規定

 
措置法第42条の4第8項第6号では、中小企業者とは、「中小企業者に該当する法人として政令で定めるものをいう」と定義されています。これを受けて、措置法施行令第27条の4第12項で、以下のように定め、同項1号又は2号(下線部)において除外されている法人が、措置法上の「みなし大企業」に該当します。

 法第42条の4第8項第6号に規定する政令で定める中小企業者は、資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下の法人のうち次に掲げる法人以外の法人又は資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人とする。

一 その発行済株式又は出資の総数又は総額の2分の1以上が同一の大規模法人(注)の所有に属している法人

二 前号に掲げるもののほか、その発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2が大規模法人の所有に属している法人

(注) 大規模法人とは、資本金の額若しくは出資金の額が1億円を超える法人又は資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人をいい、中小企業投資育成株式会社を除く

3.見直しの内容

中小企業関連税制の「みなし大企業」の判定における“大規模法人”の範囲に見直しが行われる予定です。
具体的には、みなし大企業の判定において、大規模法人に次の法人を加えるとともに、その判定対象となる法人の発行済株式又は出資から
その有する自己の株式又は出資を除外します。

イ  大法人の100%子法人
ロ  100%グループ内の複数の大法人に発行済株式又は出資の全部を保有されている法人
注)  上記の「大法人」とは、資本金の額若しくは出資金の額が5億円以上である法人、相互会社若しくは外国相互会社(常時使用従業員数が1000人超のものに限る)又は受託法人をいいます。

これにより、速報や税務動向を伝える記事では、
現行の「資本金1億円超の法人又は資本のない法人のうち常時使用する従業員数1,000人超の法人」に加え,
「100%グループ内の大法人(資本金5億円以上で,常時使用する従業員数1,000人超の法人)に発行済株式の全部を直接・間接に保有されている法人」も,“大規模法人”となると伝えられております。
すなわち,大規模法人の孫会社等(子会社がみなし大企業の場合)は「みなし大企業」となり,中小企業関連税制の適用対象外となることで税制上不利になります。

例えば、措置法67の5に規定される「少額減価償却資産の損金算入」の制度については、措置法の条文上に法人税法上の資本金5憶円以上の法人の完全支配会社等を除く規定はありませんでした。そのため、令和1年改正前においては人税法上の資本金5憶円以上の法人の完全支配会社等の該当会社であっても、改正前の措置法は直接支配に限られていたため、「少額減価償却資産の損金算入」を適用できる孫会社が存在していたのです。それが、当該改正によりみなし大企業に該当するこことなり、上記制度を適用できなくなります。ただ、ここで注意を要するのは、措置法上の各特例規定において適用の対象となる中小企業者の範囲が個別に設定されている点です。実務上は、特例毎の適用検討が必要になると思われます。

 

4.私見

(従前の記事)

上記事例の孫会社の様に大法人の100%支配下にある場合「間接」の要件が
上記の記載ぶりからだけでは、判断に迷うところです。条文の記載文言が「所有に属す」「保有されている」かにおいて「間接」支配も含むか含まないかが判断されることになり、いまいちピンときません。 既存の措令27の4⑫をダイレクトに読んでも「直接」という文言は出てこないためです。

具体的には、措置法施行令第27条の4第12項第2号の規定が、「3分の2が大規模法人の所有に属している法人」となっており、この規定では、大規模法人が直接所有していることを要件としているのに対し、
法人税法上は、複数の完全支配関係がある大法人に発行済株式等の全部を保有されている法人も含め除外している規定です。

今回の見直しによって、措置法上の「みなし大企業」の範囲が、法人税法における「みなし大企業」の範囲に歩み寄るということでしょうか。
今後の情報を待ちたいと思います。

 

以下H31.3.26追記

ようよう読み込むことで次第に、やっと理解できたのは、以下の点です。往生致します。

 「大法人」と「大規模法人」を概念上区分して理解する点が重要でした。

改正によって、

第一に、大規模法人に「大法人の100%子法人」が含まれるため、子法人自体の資本金が1億に満たずとも、子法人自体が「大規模法人」に該当する。

第二に、上記によって大規模法人に該当した子法人が100%を保有する孫法人は、大規模法人に保有されていることになるから、みなし大企業となり、中小企業者からは除外されることになる。

この理解において先述の記事が腑に落ちました。

 さらに、深く研究致しますと、今回の改正が、各措置法上の個別規定によって適用の可否を判断する中小企業者を異にしていることに気づきます。

すなわち、今後の実務においては、各特例を個別に抽出し、適用可否を個別に判断する必要が出てくると思われます。

 

この度の見直しによって、結果中小企業者の範囲は狭くなりますが、

制度趣旨は、背後に直接でなくとも大企業に資本を持たれておれば、それは大企業と同じ扱いをするということだと思います。

ただ、現実にはそのような孫会社であっても、自社単体の小規模なインフラ・資本・営業力で日夜努力を続ける企業もあります。とりわけ当該孫会社の経営者の感覚として大資本下にあるという認識が薄い場合もあると思います。

ここで、制度趣旨を一つの足がかりとして、そのような企業については以下のような期待を個人的に抱きます。

孫法人は主体的に、親の親法人の資本力・営業力・インフラ力をふんだんに利用するという積極的かつ逞しい経営判断によって改正を乗り切って頂きたいと考えています。

 

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