池田一暁公認会計士事務所

組織再編

会社法

組織再編は、一般的には、会社の組織と形態を変更する会社法上の法律行為を意味します。
その類型として、合併会社分割株式交換株式移転があります。
吸収合併、吸収分割、株式交換という吸収型の組織再編と新設合併、新設分割、株式移転という新会社設立を伴う新設型の組織再編に分類されることもあります。
その趣旨は本来的に、企業がグローバル化や専門化・細分化した世界経済への対応や企業の資本政策を柔軟に行えるよう、
企業体の組成の仕組みを任意に再編できるように法的に整備された、画期的な制度であると理解しています。

組織再編税制の趣旨

会社法が画期的なものとして組織再編制度を整備しましたが、元来税法はすべからく取引における「価値の移転」を課税の対象としてきており、 組織再編がその行為と捉え、譲渡等による価値の実現と経済的実態において変わらない場合には同様に課税の対象と捉えていると思います。
具体的には、税制適格か否かについて、「価値」が具現化する否かを
「支配」が継続しているか、否かをメルクマークとし、その規制を構築していると考えます。
組織再編が行われる場合、原則として時価で資産・負債を評価して移転するため、
「資産の移転に伴う譲渡損益から生じる、法人に対する課税」や「資産の時価評価に伴う、株主に対する課税(みなし配当課税)」や 「株主の交付に伴う株主に対する課税(株式譲渡益課税)」が発生します。これらは一般に税制非適格の組織再編と呼ばれています。
その一方で、組織再編で資産・負債を移転する場合であっても、実質的にその資産・負債に対する支配関係が継続していると認められる場合、譲渡損益を認識しないこととされています。これを一般に税制適格の組織再編と呼んでいます。
組織再編成税制において税務は、「組織再編成」が、法人格の変更(消滅、 承継、発生等)を生じさせる行為であり、
かつ、資産・負債を法人間で移転する行為であって、その行為に付随して、株主が旧株式等の対価を 受け取ったり利益の分配受けたりすることがある、と捉えています。ここで組織変更などは、会社法においては組織再編成と射程されていますが、税務にいう組織再編成税制においては規定の範囲外となります。 他方、会社法では出資と定義されている現物出資が税務では組織再編成税制の範囲に入る場合もあるなど、
会社法における組織再編成と組織再編成税制における組織再編成とは、完全に一致する ものではありません。

組織再編にかかる会計基準

企業会計においても会社法の組織再編制度の整備や国際会計基準へのコンバージェンスの流れの中で
会計基準が整備されてきました。
会社法や税法にいう用語の定義とややニュアンスを異にしますが
基本的な考えとして「支配」が継続するか否かが各判断の基準となっている点は税務と近いような気がします。
一般的に「取得」と判断された場合、パーチェス法を適用し合併法人が被合併法人の資産を時価で購入したものと捉えます。
また、「取得」以外の支配を伴わない持分の結合とみなされる時、「適正な帳簿価額を基礎とする方法」を適用し 、
合併法人が単に被合併法人の人格をそのまま引き継ぐのであるから、移転する資産は簿価で移転するものと捉えます。
国際的な会計は「時価主義」を基本原則としており「パーチェス法」を用いることが優先される傾向にあり、
この背景には、会計基準のコンバージェンス(収斂)を推進する狙いがあるものと思われます。
具体的な各会計基準ですが、いわゆる組織再編にかかる規定は企業結合・事業分離会計基準など横断的に整備されています。理解の前提として分離元か分離先かという概念が重要なように考えます。
企業結合の会計基準は、会一般に合併・会社分割・株式交換・株式移転といった、組織再編行為の会計基準であると理解されています。
企業会計基準第21 号「企業結合に関する会計基準」において、「企業結合」が、
ある企業またはある企業を構成する事業と他の企業または他の企業を構成する事業とが一つの報告単位に統合されることと定義されており、
企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」にいう他の会社の支配の獲得もその概念の中に含むものとされます。要するにこれらの基準は吸収側の視点において整理されていると考えます。また、共同支配企業と呼ばれる企業体を形成する取引および共通支配下の取引等も、企業結合会計基準の適用対象となります。
さらに、企業結合会計基準は、組織再編行為を行ったときの個別財務諸表上の会計処理のみならず、連結グループ内外の会社間で株式交換・株式移転や会社分割が行われた場合の連結上の会計処理をその適用範囲に含んでいます。
その一方で、会社分割では、事業を受け入れる分割承継会社にとっては企業結合となりますが、
事業を分離する分割会社の方では、事業が報告単位から離れていくこととなります。ここで、ある企業を構成する事業を他の企業(新設される企業を含む)に移転することを「事業分離」といいますが、この事業分離は企業結合とは異なる経済事象と考えられます。
このため、事業分離の会計処理に関しては、企業結合会計基準とは別に、企業会計基準第7 号「事業分離等に関する会計基準」が公表されています。要するにこの基準は分離元側の視点において整理されていると考えます。
事業分離には、会社分割のほか、連結子会社の持分の売却などにより、子会社が連結から外れる場合も、事業分離等会計基準の適用対象となります。
また事業分離等会計基準には、企業結合・事業分離が行われた場合の株主の会計処理についてもその範囲に含まれています。

平成30年9月時点

1.吸収合併の効力

合併契約で定められた効力発生日に発生します(会社法750条1項3項・752条1項3項)。 ただし、吸収合併の場合については、消滅会社の解散・消滅は合併登記までの間は第三者の善意悪意は問わず 第三者に対抗することができません(750条2項,752条2項)。

2.新設合併の効力

設立会社の成立の日(設立登記の日)に発生します(法754条1項2項,756条1項2項,49条,579条)。  

3.吸収分割の効力

吸収分割契約で定められた効力発生日に発生します(759条1項4項,761条1項4項)。 吸収合併と異なり登記までの間の第三者保護規定は置かれていません。これは、吸収分割の場合分割会社が 分割後においても存続するからだと思われます。

4.新設分割の効力

設立会社の成立の日(設立登記の日)に発生します(法764条1項,766条1項,49条,579条)。  

5.株式交換の効力

株式交換契約で定められた効力発生日に発生します(法769条1項,771条1項3項,769条3項)。

6.株式移転の効力

完全親会社の成立の日(設立登記の日)に発生します(法774条1項)。  

平成30年9月時点

1.全株式譲渡型のM&A

原則的に、債権債務・許認可・雇用契約など包括的に引き継ぐことができる一方で、簿外債務などの

調査である事前のデューデリジェンスが不可欠となります。

また、次のような特徴があります。

  • オーナーが売却代金を受領する
  • 上記については譲渡所得課税が生じる
  • 譲渡対象の法人自体における含み益の顕在化は発生しない
  • オーナーに資金が残るため、相続税対策上は比較的不利となる
  • 事業の一部切り離しには不向きな手法である

2.適格分割型分割のM&A

例えば、単独新設分割型分割では、不採算などの理由により不要である資産や事業を分割法人に移転し、

その後分割法人株式を売却するといったことが可能です。

また、次のような特徴があります。

  • 移転資産や事業を任意に調整することができる
  • 税務上の適格要件について注意が必要
  • 債務の引継に調整が効くため、対価の金額についても調整が行える
  • 会社分割という組織再編行為を経る必要がある
平成30年9月時点

持株会社(ホールディングス・ホールディングカンパニー)の機能

 
持株会社の機能としては、様々な効果・効能やデメリットが言われており一概に説明するのは難しいですが 
経営管理上の機能としては、従前よりある事業部制の組織を更に発展させた機能(カンパニー制)を有すると考えます。 
上記のメリットをまとめると、一般的に以下のようなものが挙げられると思います。 

持株会社制度メリット 
(1)各子会社への権限委譲により、法人単位毎に市場ニーズに基づく迅速な意思決定が期待できる 
(2)法人ごとに損益計算書を作成するため、法人経営毎の利益責任が明確になり、業績向上に向けたインセンティブが働きやすい 
(3)本社部門の事業運営に関する負担が軽減され、本社部門がより全社的、戦略的な事項に集中できるようになる 
(4)大きな単一法人組織に比べ事業部長クラスの人材がに経営者としての経験を積むことができる 
(5)事業の撤退・参入や企業の買収・売却の判断が持株状況で管理できるようになる 
(6)事業承継においては、グループ全体の支配権を持株会社の支配権と考える事ができ全体管理が明解になる

持株会社(ホールディングス・ホールディングカンパニー)の理想像

上記のような機能を踏まえた上で、持株会社本体組織の理想的な姿は、次のようなものであると考えます。 
(会社の形態組織風土は個々に異なり、あくまで一般論としての持株会社の理想形について言及しています。) 

◯株主の機能を事業活動として行う組織  
   事業会社の戦略策定、中長期的方向性を打ち出し、当該ビジョンに則して 事業会社の経営指導管理等を主たる事業とする会社 

◯事業会社が複数ある場合にグループ全体の戦略的かつ効率的業務運営の立案を行う組織 
   グループ各社の総合力を分析評価し、戦略、経営資源を効率的に再配分し、 
   グループ各社の能力を最大限に引き出す 

◯ 新たな価値創造(新規事業等)に対する経営資源の配分及び投資の決定、撤退等を行うの資本政策の意思決定組織 





組織再編を利用した持株会社(ホールディングス・ホールディングカンパニー)への移行

組織再編行為を利用した持株会社制に移行する手法としては、
主に会社分割及び株式移転・株式交換の手法がありますが、単独の企業グループが行う持株会社化においては
主に会社分割での手法が採用されています。 

平成30年9月時点

適格株式交換等の要件

100%グループ内の株式交換

定義

完全親法人となる会社と完全子法人となる会社の間に
完全支配関係がある場合の株式交換であり、株式交換後も完全支配関係の継続が見込まれる株式交換をいいます(法法2十二の十七イ,法令4の3⑱)。

適格要件

対価要件(方法2十二の十七柱書)

株式交換完全子法人の株主に株式交換完全親法人又は株式交換完全支配親法人(株式交換完全親法人の100%親会社)のいずれか一方の
株式以外の資産が交付されないことが求めらています。
ただし、以下は上記株式交換の交付金銭から除外されています。
①当該株主等に対する剰余金の配当として交付される金銭その他の資産、
②株式交換等に反対する当該株主等に対するその買取請求に基づく対価として交付される金銭その他の資産、
③株主に対する端株売却代金相当額として交付される金銭その他の資産

完全支配関係継続要件(法令4の3⑱)

株式交換前と後で完全支配関係の継続が見込まれている必要があります。

50%超100%未満のグループ内の株式交換

定義

完全親法人となる会社と完全子法人となる会社の間に支配関係がある場合の株式交換であり、
株式交換後も支配関係の継続が見込まれている株式交換をいいます(法法2十二の十七ロ,法令4の3⑲)。

適格要件

対価要件(法法2十二の十七柱書)

株式交換完全子法人の株主に株式交換完全親法人又は株式交換完全支配親法人(株式交換完全親法人の100%親会社)のいずれか一方の
株式以外の資産が交付されないことが求めらています。
ただし、以下は上記株式交換の交付金銭から除外されています。
①当該株主等に対する剰余金の配当として交付される金銭その他の資産、
②株式交換等に反対する当該株主等に対するその買取請求に基づく対価として交付される金銭その他の資産、
③株主に対する端株売却代金相当額として交付される金銭その他の資産
※50%超100%未満のグループ内の株式交換の場合には、無対価株式交換について適格要件を満たさないものと思われます(法令4の3⑲一より類推)。

従業者引継要件(法法2十二の十七ロ(1))

株式交換完全子法人の株式交換の直前の従業者のうち、その総数のおおむね80%以上に相当する数の者が、
株式交換後に株式交換完全子法人の業務に従事することが見込まれていること。

主要事業継続要件(法法2十二の十七ロ(2))

株式交換完全子法人により株式交換前に営む主要な事業が、株式交換後に株式交換完全子法人において引き続き営まれることが見込まれていること。

当事者間の支配関係の継続要件(法令4の3⑲)

株式交換後も、株式交換完全子法人と株式交換完全親法人との間に当事者間の支配関係が継続することが見込まれていること(法令4の3⑲一)
株式交換後も、株式交換完全子法人と株式交換完全親法人との間に同一の者による支配関係が継続することが見込まれていること(法令4の3⑲二)
平成30年9月時点

適格株式交換の株主の課税関係

法人である場合

適格株式交換に該当する場合には、株式交換完全子法人株式の譲渡による譲渡損益は、繰り延べられます(法法61の2⑧) 。
これは、保有していた旧株の直前の帳簿価額に相当する金銭により譲渡があったとされるためです(法法61の2⑨)。

個人である場合

投資の継続性が認められることから、譲渡はなかったものとみなされます(所法57の4①)。

平成30年7月時点

1.繰越欠損金の引継制限及び使用制限の概要について

法人税法上の適格合併に該当した場合には、原則として合併法人は被合併法人の繰越欠損金を引継ぐことができます(法57②)。(一定の完全支配関係内の法人の清算においても類似の規定が定められています。)例えば、従来より有していた100%子会社との合併など完全支配関係間での合併がそれに当たります。適格合併の場合、合併法人(存続会社)が被合併法人(消滅会社)の繰越欠損金を原則として引き継げるため、合併後に合併法人で一定の税務メリットが期待でき、そのモチベーションは小さくありません。グループ内に不採算法人が存在する場合には検討が必要な場合があります。

ただし、繰越欠損金を自社の節税に利用することを目的として、多額の繰越欠損金のある法人を買収し、その後自社と適格合併を行うことにより、被合併法人の繰越欠損金を不当に利用しようとするような租税回避行為が考えられます。そこで、上述のような租税回避行為を防止する趣旨から、制度上繰越欠損金の引継ぎについて制限が課されています。例えば、合併法人の合併事業年度開始の日の5年前の日以後に支配関係が生じているような場合において、「みなし共同事業要件」を満たさないときは、被合併法人等の繰越欠損金の引継ぎ制限及び合併法人等の繰越欠損金の使用制限が課されているなどが挙げられます。

 

2.繰越欠損金の引継ぎに制限が課せられる場合

共同事業を行うための適格合併の場合は、何ら制限なしに被合併法人の繰越欠損金のうち、未使用のものが合併法人に引き継がれます。ただし、同一企業グループ内の適格合併の場合には、繰越欠損金の引継ぎについて一定の制限が課せられるケースがあるため、十分な注意が必要です。すなわち、合併法人と被合併法人の間に特定資本関係があり、かつ、その特定資本関係が、合併法人の適格合併に係る合併事業年度開始の日の5年前の日以後に生じている場合には、被合併法人の未処理欠損金額のうち、次の欠損金額は引き継ぐことができません(法法57条3項)。特定資本関係が形成されてから5年を経過していなくても、みなし共同事業要件を満たしている場合は、繰越欠損金の引継ぎに制限は課せられません。みなし共同事業要件を満たすためには、次に該当する必要があります(法令112条7項1~5号)。

(1)みなし共同事業要件とは

上述のようにみなし共同事業要件を満たす場合には繰越欠損金の利用は制限されません。「みなし共同事業要件」を満たす組織再編とは、完全支配関係内または支配関係内の適格組織再編のうち、以下の「規模同等によるみなし共同事業」または「双方経営参画によるみなし共同事業」のいずれかを満たすものをいいます。

・規模同等によるみなし共同事業要件

以下の3つの要件をいずれも満たす合併です。

  • 合併法人の合併前の事業と、被合併法人の合併前の主要な事業のうちいずれか同士が相互に関連するものであること。
  • 双方の売上高、従業者数、資本金の額のうちいずれかの差が、概ね5倍を超えないこと(売上高・従業者数は上記の相互関連事業で比較)。
  • 相互に関連する事業が、支配関係の発生から合併直前まで継続して営まれており、かつ、支配関係の発生時点と合併直前における規模割合(上記で使用した指標)が概ね2倍を超えて変動していないこと。

(2)双方経営参画によるみなし共同事業

以下の2つの要件を共に満たす合併です。

    • 合併法人の合併前の事業と、被合併法人の合併前の主要な事業のうちいずれか同士が相互に関連するものであること。
    • 合併直前における合併法人と被合併法人のそれぞれの特定役員のうち最低1名ずつが、合併後に合併法人の特定役員になることが見込まれていること(ただし、支配関係発生日前に経営に従事する役員等であった者に限る)。

※特定役員とは、社長、副社長、代表取締役、代表執行役、専務取締役若しくは常務取締役又はこれらに準ずる者で法人の経営に従事している者をいいます。

3.その他の制限

そのほか繰越欠損金の引継ぎ利用には種々の制約がありますが、例えば以下のようなものが挙げられます。

(1)支配関係前に生じた欠損金

(2)特定資産譲渡等損失

(3)包括的な否認規定として組織再編成に係る行為または計算の否認の規定(法法132の2)

 

 適格組織再編では、資産を簿価で移転することになるため、多額の含み損を持っている資産を無税で移転し、受入側の会社において組織再編後に売却することで、損失を移転することができてしまいます。そこで、多額の含み損を有する一定の資産を「特定資産」と呼び、譲渡等における損失計上に制限を加えています。なお、被合併法人が有していた移転する資産だけでなく、合併企業が元々持っていた資産も対象となりうるので注意が必要です。

4.適格要件についての留意事項及び私見

 上述のように、繰越欠損金の引継ぎにおいては、その利用における租税回避行為を防止する趣旨から様々な要件が課され、要件の充足をもってはじめてなされるものです。また、包括的租税回避規定も用意されていることから、法が予定していない強引な要件充足は否認対象となる可能性があると考えられます。繰越欠損金の存在は、組織再編行為にとって大いなるモチベーションですが、経済人として不自然な行為に及ぶのは制度趣旨を鑑みぬ税務リスクを高める要因になると考えます。各規定の表面的理解による減税スキームの策定には大きなリスクが伴います。

 

 

 

平成30年8月時点

税務

1.適格合併

(1)増加資本金等の額の定義

増加資本金等の額は、適格合併に係る被合併法人の当該適格合併の日の前日の属する事業年度の 終了のときにおける資本金等の額から当該合併による増加資本金等(当該合併により増加した資本金 又は出資金の額をいいます。合併親法人株式[法2十二の八]を交付した場合にあっては、その交付した 合併親法人株式の当該適格合併直前の帳簿価額をいいます。)または交付した金銭(合併法人が 被合併法人の発行済株式の3分の2以上を有する場合に限ります)と抱合株式[法24②]の当該合併直前の 帳簿価額とを合計した金額を減算した金額です。

(2)算式

・ 増加資本金等の額=被合併法人の資本金等の額-(増加資本金額等+抱合株式の帳簿価額)

・ 増加資本金額等=増加した資本金の額又は交付した合併親法人株式の帳簿価額

 

(注) 適格無対価合併の場合には、増加した資本金の額がないので、次の算式によります。

・ 増加資本金等の額=被合併法人の資本金等の額-抱合株式の帳簿価額

【参考・引用一部加筆】秋山忠人編『事例検討 法人税における純資産の部-資本金等の額及び利益積立金額の企業会計と法人税との調整-』大蔵財務協会,平成30年,59頁。

(3)私見

無対価適格合併における増加資本金等の額は上記のような取扱となり、抱合株式がない場合には被合併法人の資本金等の額がそのまま増加資本金等の額となるため、合併後における合併法人の資本金等の額は、合併前合併法人の資本金等の額に合併前被合併法人の資本金等の額を加えた金額になると思われます。

平成30年7月時点 平成30年9月追記

1 完全支配関係について

完全支配関係とは、一の者(その者が個人である場合には、その者及びこれと特殊の関係のある個人)が法人の発行済株式等の全部を直接若しくは間接に保有する関係(以下「当事者間の完全支配関係」といいます。)又は一の者との間に当事者間の完全支配関係がある法人相互の関係(以下「法人相互の完全支配関係」といいます。)をいうこととされています(法2十二の七の六、法令4の2②)。 なお、一の者が個人である場合における当該一の者と特殊の関係のある個人とは、次に掲げる者(以下「親族等」といいます。)をいうこととされています(法令4①、4の2②)。
  • ⅰ 一の者の親族
  • ⅱ 一の者と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
  • ⅲ 一の者(個人である一の者に限ります。ⅳにおいて同じです。)の使用人
  • ⅳ ⅰからⅲまでに掲げる者以外の者で一の者から受ける金銭その他の資産によって生計を維持しているもの
  • ⅴ ⅱからⅳまでに掲げる者と生計を一にするこれらの者の親族

2 法人相互の完全支配関係がある場合の適格要件

法人相互の完全支配関係がある法人間の合併に係る適格要件は、以下のとおりとされています。
  • ① 合併前に当該合併に係る被合併法人と合併法人との間に同一の者による完全支配関係(法人相互の完全支配関係)があり、かつ、合併後に当該同一の者と当該合併に係る合併法人との間に当該同一の者による完全支配関係が継続することが見込まれていること(法令4の3②二)。
  • ② 当該合併における被合併法人の株主等に合併法人株式又は合併親法人株式のいずれか一方の株式又は出資以外の資産が交付されないこと(法2十二の八)。
ただし、無対価合併の手法による場合には、上記①及び②の要件のほかに、合併前の同一の者による完全支配関係が次に掲げるいずれかの関係がある完全支配関係である場合に限り、適格合併に該当することとされています(法令4の3②二)。
  • ⅰ 合併法人が被合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係
  • ⅱ 一の者が被合併法人及び合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係
  • ⅲ 合併法人及びその合併法人の発行済株式等の全部を保有する者が被合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係
  • ⅳ 被合併法人及びその被合併法人の発行済株式等の全部を保有する者が合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係
※著者追記(H30.9.6):上記要件は平成30年税制改正にて改正(下記参照)   改正後
  • ⅰ 合併法人が被合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係
  • ⅱ 被合併法人および合併法人の株主等(当該被合併法人および合併法人を除く)のすべてについて、その者が保有する被合併法人の株式等の被合併法人の発行済株式等に占める割合と当該者が保有する合併法人の株式等の合併法人の発行済株式に占める割合等が等しい場合におけるその被合併法人と合併法人との間の関係
 

3 2.②ⅱの関係における「一の者」

上記1のとおり、完全支配関係に該当するかどうかの判定においては、一の者の保有する株式だけでなく、一の者の親族等が保有する株式を一の者が保有しているものとして判定を行うこととされているところです(法令4の2②)。 したがって、ⅱの関係に該当するかどうかの判定においても、「一の者」という同一の文言により規定されていることから、一の者の親族等が保有する株式を一の者が保有しているものとして判定を行うのではないかとの疑問が生ずるところではあります。そこで、それぞれの規定に着目すれば、以下のようになります。 まず、完全支配関係に該当するかどうかの判定における「一の者」は、「一の者(その者が個人である場合には、その者及びこれと前条第一項に規定する特殊の関係のある個人)が法人の発行済株式等の全部を保有する場合」(法令4の2②)と明示的に「一の者」と特殊の関係のある個人(親族等)の保有する株式を「一の者」が保有しているものとしてその判定を行うこととされているところです。 一方、ⅱの関係に該当するかどうかの判定における「一の者」は、「一の者が被合併法人及び合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係」と規定されているに過ぎず、「一の者」と特殊の関係のある個人(親族等)の保有する株式を「一の者」が保有しているものとしてその判定を行うこととはされていません。 【参考】国税庁HP:質疑応答 無対価合併に係る適格判定について(株主が個人である場合)

4 私見その他

上述のように、無対価合併が予定されている場合には、適格合併の要件がより限定的となります。すなわち、無対価合併の場合には、「特殊関係者を含めた」完全支配関係については適格合併の要件から除かれています。このように、合併する法人の株主が、完全支配関係における「一の者」に該当する個人のみで複数ある場合の無対価合併は、対価合併と経済実質は同一でも、非適格となってしまうため注意が必要です。   ※著者追記(H30.9.6):要件は平成30年税制改正にて改正 ただし、改正後においても「その者」についてはカッコ書きが付されていない点を鑑みると、同一の持分比率同士の合併の場合以外においては依然として同族で保有する支配関係は除かれていると思われます。  

平成30年9月時点


分割継承法人における消費税納税義務特例判定の概要

吸収分割があった場合には、その事業を承継した分割承継法人についてのみ特例判定が適用され
分割法人については、特例判定が適用されません。
特例判定の対象になるのは、その分割承継法人の分割事業年度及びその翌事業年度のみであり、
翌々事業年度以後については、特例判定の対象となりません。
前提として、分割承継法人の基準期間における課税売上が1000万以下であることが特例判定の要件です。

注)納税義務判定を行う法人が、この特例判定によって課税事業者となる場合には、
「課税事業者届出書(基準期間用)」及び「相続・合併・分割等があったことにより課税事業者のなる場合の付表」を提出する必要があります。

 

特例判定の算式(消法12⑤⑥)

分割承継法人の基準期間に対応する期間における分割法人の課税売上高≧1,000万

なお、その分割承継法人の分割事業年度については、吸収分割が生じた日からその事業年度末までの期間についてだけ納税義務が
発生します。
事業年度中途から課税事業者となるため、吸収分割の前の日までの期間と区分して経理する必要があります。

私見

ここで、上記のように消費税法12条5項6項/消費税法施行令23条6項7項によると1事業年度を分割前後で分けて納税義務を判断しますが
申告書の提出はどのようにするればよいかという疑問が生じます。
⇒課税期間における内部の計算で分ければそれでよく、申告書をH28.4~8.2,H28.8.3~H29.3.31の2部に分ける必要はないと思われます。
また、同上の比準課税売上高の年度の範囲については、消費税法施行令23条⑥に「事業年度開始の日」と記載があります。

平成30年7月時点

1.合併比率・株式交換比率算定の根拠条文

合併比率や株式交換比率・分割比率などを算定する場合における合併法人と被合併法人の株式の評価方法について、会社法や税法は、明確に規定しておりません。合併比率や株式交換比率・分割比率などは、原則として、組織再編法人と被組織再編法人間で合意した株式の評価額に基づいて算定すればよいことになります。この場合における株価の評価は様々な手法があります(こちらを参照)。

本来的には自由取引下での相互の合意に基づく組織再編対価ですが、次のような問題が生じます。

2.贈与税の課税関係の問題

組織再編法人と被組織再編法人間の会社の株式の時価の比率と異なる合併比率により合併を行った場合には、株主間で贈与があったものとみなされ、利益を受けた(個人)株主に対して贈与税が課税されるおそれがあります(相続税法9条)。

この場合における評価につき上述の株式評価ひいては時価の概念に明確な規定等が無いため、問題となります。

資産課税における現行の財産評価制度をみると、相続税及び贈与税については、国税庁長官が発遣する財産評価基本通達に定めがあり、相続税や贈与税の計算の際に使用されます。財産評価基本通達による評価額は税金計算上の時価の金額ですので、客観的交換価値に対して一定の緩和が敷かれております。ただし、財産評価基本通達1における時価についての考え方は以下の引用のようになっています。

財産の価額は、時価によるものとし、時価とは、課税時期(相続、遺贈若しくは贈与により財産を取得した日若しくは相続税法の規定により相続、遺贈若しくは贈与により取得したものとみなされた財産のその取得の日又は地価税法第2条《定義》第4号に規定する課税時期をいう。以下同じ。)において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額は、この通達の定めによって評価した価額による

すなわち、評価通達の定めによる評価も時価の範疇にあると思われます。ただし、他の基準その他における時価の概念と比べると比較的清算価値、すなわち換金性に重点をおいた概念と思われます。

 

3.法人税の課税関係の問題

例えば、法人税法37条第7項では法人間の取引についてはすべてその時点の時価によることが明記され、当該時価よりも高額または低額で取引が行われた場合、その取引価額と時価との差額のうち実質的に贈与または無償の供与をしたと認められる金額は寄付金の額に含めるものとしています。これは、いわゆる寄附金についての規定ですが、時価と取引価額の間に相違があれば、課税関係が発生する可能性があることを意味していると思われます。合併比率等についても上記規定の射程圏内であると思われます。

ここで、以下のような通達があります。

 

法人税基本通達9-1-14 上場有価証券等以外の株式の価額の特例

 法人が、上場有価証券等以外の株式(9-1-13の(1)及び(2)に該当するものを除く。)について法第33条第2項《資産の評価換えによる評価損の損金算入》の規定を適用する場合において、事業年度終了の時における当該株式の価額につき昭和39年4月25日付・直資56直審(資)17「財産評価基本通達」(以下9-1-14において「財産評価基本通達」という。)の178から189-7まで《取引相場のない株式の評価》の例によって算定した価額によっているときは、課税上弊害がない限り、次によることを条件としてこれを認める。

(1) 当該株式の価額につき財産評価基本通達179の例により算定する場合(同通達189-3の(1)において同通達179に準じて算定する場合を含む。)において、当該法人が当該株式の発行会社にとって同通達188の(2)に定める「中心的な同族株主」に該当するときは、当該発行会社は常に同通達178に定める「小会社」に該当するものとしてその例によること。

(2) 当該株式の発行会社が土地(土地の上に存する権利を含む。)又は金融商品取引所に上場されている有価証券を有しているときは、財産評価基本通達185の本文に定める「1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)」の計算に当たり、これらの資産については当該事業年度終了の時における価額によること。

(3) 財産評価基本通達185の本文に定める「1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)」の計算に当たり、同通達186-2により計算した評価差額に対する法人税額等に相当する金額は控除しないこと。

交換比率を直接規定した通達ではありませんが、一定の条件の下、財産基本通達による「小会社」方式による評価方法等を「課税上弊害がない限り」において容認している規定であると思われます。また、上記通達には法人税相当額を控除しない旨が規定されています。

我々、実務家が拠って立つ合併比率算定のための評価基準を求める際に、以下のように上記通達を参考にすることがあります。

「同族会社等の合併では、法人税法通達における株式の評価方法を用いて算定することが少なくありません。」(朝長英樹、竹内陽一、中尾健『改定増補実践ガイド企業組織再編税制』清文社,2017年,p.21)。

合併比率に関する実務上の論点として、時価純資産価額法の算定において法人税等相当額を控除すべきか否かについても控除すべきという考え方と控除しないという考え方があり得ます。

 

 

4.各租税法規における時価概念の幅・問題提起及び私見

上記2・3で見たように贈与税・法人税間において時価の概念は大局的に共通してはいるものの、特例や例外また細目について異同があると思われます。ここで、個人的に注目したいのは、市場で取引される客観的交換価値いわゆる市場価額と上記評価通達や法人税基本通達のいう時価に大きな金額的乖離がある場合が往々にして存在するということです。そもそも、贈与課税問題の範疇における相続税評価額と法人税法における時価認容規定(上記法人税法通達)に違いがある点は、大変興味深いです。税務上の範囲のみ鑑みても各種租税法間における、その立法趣旨を異にすることから生じる細目規定の考え方の相違があるということです。ここで、実務を行う身として、取引法人間及びその株主間において課税関係の生じない無二の「時価」を見出すことは、本来的・基本的な適格組織再編の重要事項であると考えます。その幅の中で、各関連当事者において課税関係の生じない企業価値をもって交換比率を算出することは我々実務家にとって深い検討課題であると思われます。

 

改正のポイント

(1) 適格株式分配に係る株式の保有関係に関する要件の見直し

完全支配関係がある法人間で行われる合併,分割,現物出資,株式交換及び株式移転(以下「合併等」といいます。)の後に適格株式分配を行うことが見込まれている場合には,その合併等の時からその適格株式分配の直前の時までその合併等に係る支配株主とその適格株式分配に係る完全子法人とされる法人との間に完全支配関係が継続することが見込まれていれば株式の保有関係に関する要件に該当することとされました。

(2) 従業者従事要件及び事業継続要件の見直し

支配関係がある法人間の組織再編成及び共同で事業を行うための組織再編成の適格要件について,当初の組織再編成の後に完全支配関係がある法人間で従業者又は事業を移転すること等が見込まれている場合にも,当初の組織再編成の適格要件のうち従業者従事要件及び事業継続要件に該当することとされました。

(3) 無対価組織再編成

対価が交付されない合併,分割及び株式交換について,適格組織再編成となる類型の見直しが行われるとともに,非適格組織再編成となる場合の処理の方法の明確化が行われました。

【適用関係】

平成32年4月1日以後に行われる組織再編成について適用し,同日前に行われた組織再編成については,なお従前の例によることとされています。

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