株式評価について
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当事務所の提供する株式評価サービスについて説明しています。
目次
税務上の株価評価
取引相場のない株式(「上場株式」及び「気配相場等のある株式」以外の株式をいいます。)は、相続や贈与などで株式を取得した株主が、その株式を発行した会社の経営支配力を持っている同族株主等か、それ以外の株主かの区分により、それぞれ原則的評価方式又は特例的な評価方式の配当還元方式により評価します。
1 原則的評価方式
原則的評価方式は、評価する株式を発行した会社を総資産価額、従業員数、及び取引金額により大会社、中会社又は小会社のいずれかに区分して、原則として次のような方法で評価をすることになっています。
(1) 大会社
大会社は、原則として、類似業種比準方式により評価します。類似業種比準方式は、類似業種の株価を基に、評価する会社の一株当たりの「配当金額」、「利益金額」及び「純資産価額(簿価)」の三つで比準して評価する方法です。
なお、類似業種の業種目及び業種目別株価などは、国税庁ホームページで閲覧できます。
(2) 小会社
小会社は、原則として、純資産価額方式によって評価します。純資産価額方式は、会社の総資産や負債を原則として相続税の評価に洗い替えて、その評価した総資産の価額から負債や評価差額に対する法人税額等相当額を差し引いた残りの金額により評価する方法です。
(3) 中会社
中会社は、大会社と小会社の評価方法を併用して評価します。
2 特例的な評価方式
取引相場のない株式は、原則として、以上のような方式により評価しますが、同族株主等以外の株主が取得した株式については、その株式の発行会社の規模にかかわらず原則的評価方式に代えて特例的な評価方式の配当還元方式で評価します。配当還元方式は、その株式を所有することによって受け取る一年間の配当金額を、一定の利率(10%)で還元して元本である株式の価額を評価する方法です。
3 特定の評価会社の株式の評価
次のような特定の評価会社の株式は、原則として、(1)~(5)については純資産価額方式により、(6)については清算分配見込額により評価することになっています。
なお、(1)~(4)の会社の株式を取得した同族株主等以外の株主については、特例的な評価方式である配当還元方式により評価します。
1. 類似業種比準方式で評価する場合の3つの比準要素である「配当金額」、「利益金額」及び「純資産価額(簿価)」のうち直前期末の比準要素のいずれか2つがゼロであり、かつ、直前々期末の比準要素のいずれか2つ以上がゼロである会社(比準要素数1の会社)の株式
2. 株式等の保有割合(総資産価額中に占める株式、出資及び新株予約権付社債の価額の合計額の割合)が一定の割合以上の会社(株式等保有特定会社)の株式
3. 土地等の保有割合(総資産価額中に占める土地などの価額の合計額の割合)が一定の割合以上の会社(土地保有特定会社)の株式
4. 課税時期(相続の場合は被相続人の死亡の日、贈与の場合は贈与により財産を取得した日)において開業後の経過年数が3年未満の会社や、類似業種比準方式で評価する場合の3つの比準要素である「配当金額」、「利益金額」及び「純資産価額(簿価)」の直前期末の比準要素がいずれもゼロである会社(開業後3年未満の会社等)の株式
5. 開業前又は休業中の会社の株式
6. 清算中の会社の株式
出典:国税庁ホームページ
取引目的の株価評価
取引目的の株式評価の算定局面
非上場会社の株価を算定する局面は、M&A(敵対的・友好的)、事業承継、相続、増資、ストックオプションの行使価格等さまざまであり、当事者も、支配株主や役員、少数株主である場合等があります。とりわけ、M&Aプロセスにおけるデューデリジェンスは、M&Aのプロセスの中でも特に重要なプロセスと言われています。通常、買い手などの情報利用者は、初期の段階において売り手と比較して不利な立場にありますが、このプロセスを経ることにより、仮説の検証・リスクの評価による買収価格低減などの便益を得る事ができます。
しかしながら、現実の多様な状況を折込ながら科学的に行うことは、困難が伴います。当事企業の企業文化の相違やM&A自体の取引の非日常性等がその要因として存在します。
取引目的の株式評価の算定手法
非上場会社の株価は、目的や、売主又は買主の立場からも、さらには売買の時点によっても変わるものであり、唯一絶対的な取引価額(時価)というものはなく、相対取引のなかでお互いに同意する価額をもって時価とされます。その算定にあたっては、一方に有利に働くなどの恣意性を排除した、より合理的な算定方法によって評価する必要があります。合理的な算定方法は、会計実務の中で一定程度合理的と認められている算定方法があり、以下のような手法から単独案・複数の評価の折衷案等を総合的に勘案して決定いたします。また、上述の税務上の株価評価を参酌することもあります。
1、純資産基準(コスト・アプローチ又はネットアセット・アプローチ)
1.簿価純資産法:評価対象会社の簿価純資産(簿価資産-簿価負債)を評価額とします。
2.時価純資産法:評価時点の時価で資産を再評価し、負債を要弁済額で再評価して算定される純資産を評価額とします。純資産法はいづれも静的な企業価値の測定であるため、企業の超過収益力や将来成長率を評価に反映しない側面がある一方で、比較的客観的に測定しうる手法であるという利点があります。
2、市場価格法(マーケット・アプローチ)
1.類似業種比較法:評価対象会社と同業種・同規模の公開企業を比準させる方法です。PERやPBRから、企業価値や株主価値を評価します。
2.類似業種比準法:評価対象会社と類似する同種の1株当たり株価、配当、純資産、純利益の平均値を対象企業の数値と対比させて株価を評価します。類似する会社の選定や複数事業をしている場合業種の選定等合致するケースの選出が困難な場合が多いです。また、類似業種比準法は税務上会社規模によって利用される方法ですが、一般的な評価ではあまり利用されません。
3、収益基準法(インカム・アプローチ)
1.DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法):将来当該事業から得られると期待されるフリーキャッシュフローを、有利子負債と株主それぞれのリスクを加味した要求利回りで割り引くことにより評価します。会社の資産負債といったBS以外の要素、すなわち資金稼得能力を株価に反映させる手法です。将来の予測であるため、客観的・合理的算定が要求されます。
2.収益還元価値法:過去の経営成績である利益を資本還元率で除して評価します。
将来の事業計画に恣意性が介入しがちであり、将来の収益が安定していることを前提にしており、資本構成の変化や経済の外的要因の動向等不確実要素が多いため、客観性の観点に弱点があります。算定の要素である投資家の要求利回りについても不確実性をはらんでいます。
裁判目的の株価評価
裁判目的の株式評価の算定局面
裁判目的で企業価値又は株主価値(株式価値)を評価しなければならない場合がありますが、その態様は多岐にわたっています。
会社法等規定のケース
株式譲渡制限会社(株式の譲渡に取締役会等の承認を必要とする会社)において、会社が当該譲渡を不承認とした場合に、株主が株式買取請求権を行使するケースや合併、株式交換等に反対した株主が会社法の規定に基づき株式買取請求権を行使するケースが挙げられます。また、会社更生法上の財産評定において更生会社が保有する株式を更生管財人が評価する場合(会社更生法83条1項)、遺産分割審判(家事審判法9条1項乙類10号)において家事審判官が遺産に含まれる株式の価値を評価する場合などです。
当事者間同士で利害が対立し、かつ、第三者の介入が不可欠であるケース
例えば、創業者の相続発生とともに同族間で経営権の継承割合につき、当事者間同士での解決が困難な場合等が挙げられます。
事業再生目的の株価評価
事業再生M&A等による再生
企業は営利追及団体ですが、時に様々な理由から事業の継続が困難となる場合があります。会社が債務を弁済できる見込みがなくなった際、債務整理においては、その会社の事業を継続させ、それによって得られる将来の利益を原資として、債権者への弁済金の確保を目指すことがあります。
このような企業が事業再生を果たしていくためには、債権者による債権カットや、その後の長期弁済契約への変更といった金融機関からの対応を期待するだけでなく、スポンサーからの出資や、会社分割、事業譲渡によって圧縮後の債務の弁済を確実にする「事業再生M&A」の可能性も探ることが必要となります。
事業再生目的の株価評価とは
上述のような要請から金融機関等の債権者からのニーズの第一は、果たして解散等による破産配当等静的な債権回収と今後の事業継続を通じた将来キャッシュフローの現在価値など動的な債権回収いづれの選択肢の採用が弁済価値が高いかを知ることです。
そのためには、企業価値の評価として企業の清算を前提とした清算価値による株価評価と、企業継続を前提としたDCF法などのような株価評価を比較・検討する必要があります。
清算価値(株価)評価とは
清算価値とは、上述のニーズに基づいて企業清算を前提として企業の価値を、過去の企業活動の結果として、現在の会社の資産をもとに算出したものです。 主に帳簿価額(簿価)をもとに算出する方法と、資産や負債を全て時価に置き換えて評価する2つの方法があります。 また、時価評価については、精算価値という特性から一般に再調達価額ではなく、処分可能価額が利用されます。