組織再編(企業再編)の法務・会計・税務研究
会社法
組織再編は、一般的には、会社の組織と形態を変更する会社法上の法律行為を意味します。
その類型として、合併、会社分割、株式交換、株式移転があります。
吸収合併、吸収分割、株式交換という吸収型の組織再編と新設合併、新設分割、株式移転という新会社設立を伴う新設型の組織再編に分類されることもあります。
その趣旨は本来的に、企業がグローバル化や専門化・細分化した世界経済への対応や企業の資本政策を柔軟に行えるよう、
企業体の組成の仕組みを任意に再編できるように法的に整備された、画期的な制度であると理解しています。
組織再編税制の趣旨
会社法が画期的なものとして組織再編制度を整備しましたが、元来税法はすべからく取引における「価値の移転」を課税の対象としてきており、 組織再編がその行為と捉え、譲渡等による価値の実現と経済的実態において変わらない場合には同様に課税の対象と捉えていると思います。
具体的には、税制適格か否かについて、「価値」が具現化する否かを
「支配」が継続しているか、否かをメルクマークとし、その規制を構築していると考えます。
組織再編が行われる場合、原則として時価で資産・負債を評価して移転するため、
「資産の移転に伴う譲渡損益から生じる、法人に対する課税」や「資産の時価評価に伴う、株主に対する課税(みなし配当課税)」や 「株主の交付に伴う株主に対する課税(株式譲渡益課税)」が発生します。これらは一般に税制非適格の組織再編と呼ばれています。
その一方で、組織再編で資産・負債を移転する場合であっても、実質的にその資産・負債に対する支配関係が継続していると認められる場合、譲渡損益を認識しないこととされています。これを一般に税制適格の組織再編と呼んでいます。
組織再編成税制において税務は、「組織再編成」が、法人格の変更(消滅、 承継、発生等)を生じさせる行為であり、
かつ、資産・負債を法人間で移転する行為であって、その行為に付随して、株主が旧株式等の対価を 受け取ったり利益の分配受けたりすることがある、と捉えています。ここで組織変更などは、会社法においては組織再編成と射程されていますが、税務にいう組織再編成税制においては規定の範囲外となります。 他方、会社法では出資と定義されている現物出資が税務では組織再編成税制の範囲に入る場合もあるなど、
会社法における組織再編成と組織再編成税制における組織再編成とは、完全に一致する ものではありません。
組織再編にかかる会計基準
企業会計においても会社法の組織再編制度の整備や国際会計基準へのコンバージェンスの流れの中で
会計基準が整備されてきました。
会社法や税法にいう用語の定義とややニュアンスを異にしますが
基本的な考えとして「支配」が継続するか否かが各判断の基準となっている点は税務と近いような気がします。
一般的に「取得」と判断された場合、パーチェス法を適用し合併法人が被合併法人の資産を時価で購入したものと捉えます。
また、「取得」以外の支配を伴わない持分の結合とみなされる時、「適正な帳簿価額を基礎とする方法」を適用し 、
合併法人が単に被合併法人の人格をそのまま引き継ぐのであるから、移転する資産は簿価で移転するものと捉えます。
国際的な会計は「時価主義」を基本原則としており「パーチェス法」を用いることが優先される傾向にあり、
この背景には、会計基準のコンバージェンス(収斂)を推進する狙いがあるものと思われます。
具体的な各会計基準ですが、いわゆる組織再編にかかる規定は企業結合・事業分離会計基準など横断的に整備されています。理解の前提として分離元か分離先かという概念が重要なように考えます。
企業結合の会計基準は、会一般に合併・会社分割・株式交換・株式移転といった、組織再編行為の会計基準であると理解されています。
企業会計基準第21 号「企業結合に関する会計基準」において、「企業結合」が、
ある企業またはある企業を構成する事業と他の企業または他の企業を構成する事業とが一つの報告単位に統合されることと定義されており、
企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」にいう他の会社の支配の獲得もその概念の中に含むものとされます。要するにこれらの基準は吸収側の視点において整理されていると考えます。また、共同支配企業と呼ばれる企業体を形成する取引および共通支配下の取引等も、企業結合会計基準の適用対象となります。
さらに、企業結合会計基準は、組織再編行為を行ったときの個別財務諸表上の会計処理のみならず、連結グループ内外の会社間で株式交換・株式移転や会社分割が行われた場合の連結上の会計処理をその適用範囲に含んでいます。
その一方で、会社分割では、事業を受け入れる分割承継会社にとっては企業結合となりますが、
事業を分離する分割会社の方では、事業が報告単位から離れていくこととなります。ここで、ある企業を構成する事業を他の企業(新設される企業を含む)に移転することを「事業分離」といいますが、この事業分離は企業結合とは異なる経済事象と考えられます。
このため、事業分離の会計処理に関しては、企業結合会計基準とは別に、企業会計基準第7 号「事業分離等に関する会計基準」が公表されています。要するにこの基準は分離元側の視点において整理されていると考えます。
事業分離には、会社分割のほか、連結子会社の持分の売却などにより、子会社が連結から外れる場合も、事業分離等会計基準の適用対象となります。
また事業分離等会計基準には、企業結合・事業分離が行われた場合の株主の会計処理についてもその範囲に含まれています。
平成30年9月時点
1.吸収合併の効力
合併契約で定められた効力発生日に発生します(会社法750条1項3項・752条1項3項)。 ただし、吸収合併の場合については、消滅会社の解散・消滅は合併登記までの間は第三者の善意悪意は問わず 第三者に対抗することができません(750条2項,752条2項)。
2.新設合併の効力
設立会社の成立の日(設立登記の日)に発生します(法754条1項2項,756条1項2項,49条,579条)。
3.吸収分割の効力
吸収分割契約で定められた効力発生日に発生します(759条1項4項,761条1項4項)。 吸収合併と異なり登記までの間の第三者保護規定は置かれていません。これは、吸収分割の場合分割会社が 分割後においても存続するからだと思われます。
4.新設分割の効力
設立会社の成立の日(設立登記の日)に発生します(法764条1項,766条1項,49条,579条)。
5.株式交換の効力
株式交換契約で定められた効力発生日に発生します(法769条1項,771条1項3項,769条3項)。
6.株式移転の効力
完全親会社の成立の日(設立登記の日)に発生します(法774条1項)。