池田一暁公認会計士事務所

平成31年(令和元年)
節税保険に対応した法人税基本通達の改正案について

法人保険イメージ
【参考】「法人税基本通達の制定について」(法令解釈通達)ほか1件の一部改正(案)(定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱い)等に対する意見公募手続の実施について 
【参考】「国税庁 節税保険に対応した法人税基本通達の改正案を公表 」『税務通信』 3552号  2019年04月15日
【参考】「 節税保険 最高解約返戻率に応じた損金算入額等をケース別に確認 」『税務通信』 3553号  2019年04月22日
【参考】「 国税庁 節税保険に対応した改正法人税基本通達 」『税務通信』 3562号  2019年07月1日
【参考】「 【通信DB限定】節税保険通達 令和元年7月8日以後の契約分から適用 」『税務通信』 3562号  2019年07月1日
【参考】 国税庁HP「法人税基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)(定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱い)」,定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱いに関するFAQ

目次

1.概要

 2019年4月11日に、国税庁は「法人税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正案を公示しました。
これまで、法人が支払う定期保険などの保険料については、定期保険についての法人税法基本通達に加え 長期平準定期保険・逓増定期保険・がん保険などの商品群ごとの個別通達によって税務上の取扱が規定されてきました。
 しかしながら、昨今の保険メーカーによる様々な商品開発の結果、商品の実態と税務規定の乖離が生じ、商品群ごとの税務取扱を廃止し、単一的な資産計上ルールが新設されることとなりました。
なお、最高解約返戻率50%超の商品は保険料の一部資産計上が原則になりますが、既存契約分に係る保険料への遡及適用はない模様と紹介されています。

 適用時期につき令和元年7月1日追記,7月8日加筆

改正通達の適用時期

 適用時期
定期保険又は第三分野保険の保険料(下記保険料を除く)令和元年7月8日以後の契約分
解約返戻金相当額のない短期払の定期保険又は第三分野保険の保険料令和元年10月8日以後の契約分

※なお「経過的取扱い・・・改正通達の適用時期」より編集

2.改正に対する私見・評価

一介の若輩実務家として以下のように思います。

もともと、今回の改正の対象とされている保険商品が節税保険と謳われていた事について個人的に疑義がありますが、それはさておき。(国税庁も同様の観点から経営者を錯覚させるおそれがあるとして問題視したことが今回の改正の発端【4月20日「朝日新聞」記事等】)

これまでの通達においては、法人が支払う定期保険等の経理処理を決定する際に、保険商品の内容について検討する必要があり、経理・会計人にとって保険のしくみ等専門外の知識が少なからず必要であったと思います。 


今回の改正は「返戻率」に着目した「単一」ルールということで、一介の税務専門家として 従来よりは解り易い取扱になりそうだと考えています。(当初はそのように考えていましたが、とくにFAQなどを読み込むことなど今回の情勢を追いかけるにつれ、それは甘い考えであったと思い始めました。)


会計的及び税務的発想からは、保険商品が「貯蓄的・資産性を有しているか(返戻金があるか否か)」それとも「経費的・経費性を有しているか(掛け捨てか否か)」において処理が決定されるのは、至極腑に落ちやすいと考えています。

法規での対応でなく、通達による対応である点は批判もありますが、個別規定の排除により、複雑な取扱が整理された点も評価されます。

「最高」解約返戻率をパラメータとしている点は、税務規定らしいと感慨深く感じます。

保険のデベロッパーについては、歴史的に繰り返される節税と租税回避のいたちごっこよりも、保険の本質的な機能であるリスクマネジメントの観点から、より消費者の利便に資する保障の開発に目が向けばと祈念致します。

 また制度が以下のように規定された場合、「法人保険」のみについて言えば保険メーカーが、請求もしくは支払通知の都度会計処理を顧客に通告するのが最も実務的で、そのような慣行となるのを期待しています。

 実際上、保険料の支払いが発生する都度に経理処理を検討するにあたって、該当時期が保険期間のいつに当たるかという保険商品毎の管理が必要となるため、それを消費者が管理するというよりもむしろ、保険メーカーのファンダメンタル的なサービスの一環としてその「会計処理のお知らせ」連絡サービスがあれば実務上円滑に流れるのではと考えています。

 

POINT
 すなわち、改正のポイントを総括すれば、今回の改正が着目した「返戻率」という概念は会計にいう「資産性」の概念に他ならず、
いくらの換金価値があるかという観点によって正味実現可能価額での保険契約の評価を行うという会計の基本理念に沿った取扱であると思います。

従来よりその観念は税務規定の根底に流れていたものと思いますが、それが個別規定ではなく包括的に規定された点を個人的には嬉しく感じています。

3.改正後簡易版図表

下記表は参考として掲示しております。

概要を一覧化するため、詳細は省いております。実際の適用にあたっては、種々の前提や要件があり、その適用にあたって十分な注意が必要です。

最高解約返戻率など

資産計上期間資産計上額(残額を損金算入)
50%以下なしなし
50%超70%以下保険期間の前半4割相当の期間当期支払保険料の40%
70%超85%以下当期支払保険料の60%
85%超保険期間開始日から最高解約返戻率となる期間等の終了日当期支払保険料×最高解約返戻率の70%(保険期間開始日から10年経過日までの期間は90%)
 

返戻率 50%

返戻率 70%

返戻率 85%

4.具体的改正の背景

ア.従前の取扱い

(定期保険に係る保険料の税務上の取扱い)
 法人税法上、当該事業年度の損金の額に算入される費用の額は、別段の定めがあるものを除き、一 般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとされています(法22③、④)

 企業会計原則では、前払費用については、当期の損益計算から除去し、資産の部に計上しなければな らないとされており(企業会計原則第二損益計算書原則一、原則第三貸借対照表原則四、財務諸表等規則16、31 の2)、このような会計処理は一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に適合するものと認められますので、法人税法上、前払部分の保険料は資産計上するのが原則となります。

 保険期間が複数年となる定期保険の支払保険料は、加齢に伴う支払保険料の上昇を抑える観点から平準化されているため、保険期間前半における支払保険料の中には、保険期間後半における保険料に充当される部分、すなわち前払部分の保険料が含まれています。

 しかし、その平準化された定期保険の保険料は、いわゆる掛捨ての危険保険料及び付加保険料のみで構成されており、これらを期間の経過に応じて損金の額に算入したとしても、一般に、課税所得の適正な期間計算を大きく損なうこともないと考えられることから、法人税基本通達9-3-5において、その保険料の額は期間の経過に応 じて損金の額に算入することと取り扱っています。

 ただし、特に保険期間が長期にわたる定期保険や保険期間中に保険金額が逓増する定期保険は、その保険期間の前半において支払う保険料の中に相当多額の前払部分の保険料が含まれており、中途解約をした場合にはその前払部分の保険料の多くが返戻されるため、このような保険についても上記の法人税基本通達9-3-5の取扱いをそのまま適用すると課税所得の適正な期間計算を損なうこと となります。

 したがって、このような保険については、上記の原則的な考え方に則った取扱いとすることが適当であるため、平成20 年2月28 日付課法2-3「法人が支払う長期平準定期保険等の保険 料の取扱いについて」(個別通達)により、その支払保険料の損金算入時期等に関する取扱いの適正化を図ってきました。 


(いわゆる第三分野保険に係る保険料の税務上の取扱い)
 また、いわゆる第三分野保険についても上記と同様の考え方の下、昭和54 年6月8日付直審4-18「法人契約の新成人病保険の保険料の取扱いについて」平成元年12 月16 日付直審4-52、直審 3-77「法人又は個人事業者が支払う介護費用保険の保険料の取扱いについて」平成13 年8月10 日付課審4-100「法人契約の『がん保険(終身保障タイプ)・医療保険(終身保障タイプ)』の保険料の取 扱いについて(法令解釈通達)」及び平成24 年4月27 日付課法2-5、課審5-6「法人が支払う – 3 –『がん保険』(終身保障タイプ)の保険料の取扱いについて(法令解釈通達)」により、それぞれの個別通達に定める保険について、支払保険料の損金算入時期等に関する取扱いを明らかにしてきました。

イ.見直しの必要性

しかしながら、これらの個別通達の発遣後相当年月を経過し、

  1. 保険会社各社の商品設計の多様化 や長寿命化等により、それぞれの保険の保険料に含まれる前払部分の保険料の割合にも変化が見られること、
  2. 類似する商品であっても個別通達に該当するか否かで取扱いに差異が生じていること、
  3. 前払部分の保険料の割合が高い同一の商品であっても加入年齢や保険期間の長短により取扱いが異なること、
  4. 第三分野保険のうち個別通達に定めるもの以外はその取扱いが明らかではなかったこと

を理由に、各保険商品の実態を確認して、その実態に応じた取扱いとなるよう資産計上ルールの見直しを行うとともに、類似する商品や第三分野保険の取扱いに差異が生じることのないよう定期保険及び第三分野保険の保険料に関する取扱いを統一することとされています。

5.具体的改正案の内容

A.具体的改正案等の概要

⑴ 定期保険及び第三分野保険の保険料に関する原則的な取扱い 
 第三分野保険の保険料は危険保険料及び付加保険料のみで構成されており、その保険料の構成は定期保険と同様と認められることから、従来の定期保険の取扱いに第三分野保険の取扱いを加え、 これらの保険料に含まれる前払部分の保険料が相当多額と認められる場合を除いて、期間の経過に応じて損金の額に算入することとします(法人税基本通達9-3-5)
(注) 連結納税基本通達8-3-5においても同様の取扱いが定められているため、上記と同様の改正を行います。

⑵ 定期保険等の保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれる場合の取扱い
 法人が、自己を契約者とし、役員又は使用人(これらの者の親族を含みます。)を被保険者とする保険期間が3年以上の定期保険又は第三分野保険で最高解約返戻率が50%を超えるものに加入し て、その保険料を支払った場合には、課税所得の期間計算を適正なものとするため、その支払った保険料の額については、最高解約返戻率に応じ、それぞれ次のイからハまでにより取り扱うことと します(法人税基本通達9-3-5の2)。 


イ 最高解約返戻率が50%超70%以下となる場合
 保険期間の開始から保険期間の100 分の40 に相当する期間(資産計上期間)においては、支払った保険料の額のうち、その金額に100 分の40 を乗じた金額は資産に計上し、残額は損金の額に算入します。また、資産計上期間経過後は、支払った保険料を保険期間の経過に応じて損金の額に算入するとともに、資産に計上した金額については、保険期間の100 分の75 に相当する期間経過後から保険期間終了までにおいて均等に取り崩し、保険期間の経過に応じて損金の額に算入します。
(注) 被保険者一人当たりの年換算保険料相当額(保険期間中における支払保険料の総額を保険期間の年数で除して計算した金額をいいます。)が20 万円以下のものについては対象としない(上記⑴の取扱いによる)こととします。  (この取扱は、改正案が変更となり30万以下となっています。下記 「※その他」箇所参照。)

ロ 最高解約返戻率が70%超85%以下となる場合
 保険期間の開始から保険期間の100 分の40 に相当する期間(資産計上期間)においては、支払った保険料の額のうち、その金額に100 分の60 を乗じた金額は資産に計上し、残額は損金の 額に算入します。また、資産計上期間経過後は、支払った保険料を保険期間の経過に応じて損金の額に算入するとともに、資産に計上した金額については、保険期間の100 分の75 に相当する期間経過後から保険期間終了までにおいて均等に取り崩し、保険期間の経過に応じて損金の額に算入します。
ハ 最高解約返戻率が85%超となる場合
 保険期間の開始から、最高解約返戻率となる期間(当該期間経過後の各期間において、その期間における解約返戻金相当額からその直前の期間における解約返戻金相当額を控除した金額を 年換算保険料相当額で除した割合が100 分の70 を超える期間がある場合には、その超えることとなる最も遅い期間)の終了まで(資産計上期間(※))においては、支払った保険料の額のうち、 その金額に最高解約返戻率の100 分の70(保険期間開始から10 年を経過するまでは、100 分の90)を乗じた金額は資産に計上し、残額は損金の額に算入します。また、資産計上期間経過後は、 支払った保険料を保険期間の経過に応じて損金の額に算入するとともに、資産に計上した額につ いては、解約返戻金相当額が最も高い金額となる期間経過後から保険期間終了までにおいて均等 に取り崩し、保険期間の経過に応じて損金の額に算入します。
(※) 資産計上期間が5年未満となる場合には保険期間の開始から5年を経過するまでとし、 保険期間が10 年未満である場合には、保険期間の開始から当該保険期間の100 分の50 に 相当する期間終了までとします。
(注) 連結納税基本通達8-3-5の2についても同様の取扱いを定めます。 

 ※補論ほか留意事項(令和元年7月1日追記,同7月8日加筆

「保険期間が3年未満の定期保険等」や「最高解約返戻率70%以下,かつ,年換算保険料相当額が30万円以下(改正案:20万円以下)の定期保険等」の保険料については,資産計上の必要はなく,期間の経過に応じて損金算入することになると言われています(法基通9-3-5)。

 また、いわゆる「解約返戻金のない(もしくはごく少額の)短期払いの定期保険が年間の支払保険料30万以下である場合」には、支払日の属する事業年度での損金算入を認めています。(法基通9-3-5注2以下引用、下線については留意事項として筆者加筆)。

2 (1)及び(2)前段の取扱いについては、法人が、保険期間を通じて解約返戻金相当額のない定期保険又は第三分野保険(ごく少額の払戻金のある契約を含み、保険料の払込期間が保険期間より短いものに限る。以下9-3-5において「解約返戻金相当額のない短期払の定期保険又は第三分野保険」という。)に加入した場合において、当該事業年度に支払った保険料の額(一の被保険者につき2以上の解約返戻金相当額のない短期払の定期保険又は第三分野保険に加入している場合にはそれぞれについて支払った保険料の額の合計額)が30 万円以下であるものについて、その支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときには、これを認める。

 その一方で

⇒★注意平成24年4月27日付課法2-5他1課共同「法人が支払う「がん保険」(終身保障タイプ)の保険料の取扱いについて(法令解釈通達)」が廃止される予定であることから、従来同規定に記載のあった「例外的取扱い」の規定の適用も廃止され、「年間支払保険料30万円超の短期払いのがん保険等」については保険期間の経過に応じて保険料を損金算入する必要があると思われます。[参考]国税庁HP「定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱いに関するFAQ」

 

上記の取扱いとした理由及び考え方は次のとおりです。

B.最高解約返戻率に基づいて資産計上する理由等

 支払保険料に含まれる前払部分の保険料の額は、保険契約者には通知されず、把握できないことから、その金額を資産計上することは極めて困難となります。そこで、保険契約者が把握可能な指標で、前払部分の保険料の累積額に近似する解約返戻金に着目し、解約返戻率(保険契約時において契約者に示された解約返戻金相当額について、それを受けることとなるまでの間に支払うこととなる保険料の額の合計額で除した割合をいいます。)に基づいて資産計上すべき金額を算定することが、客観的かつ合理的と考えられます。

 また、毎年の解約返戻率の変動に伴い資産計上割合を変動させることは煩雑であり、その平均値などを求めることも困難であることから、特定可能な最高解約返戻率を用いて資産計上割合を設定するのが計算の簡便性の観点から相当です。


 なお、解約返戻金相当額には前払部分の保険料の累計額のほかに運用益が含まれるため、運用益相当額については資産計上額に含まれないよう保険商品の実態を反映した資産計上割合を設定することとします。

C.最高解約返戻率の区分に応じた資産計上のルール

 一方で、現行の取扱いは支払保険料の額に一定割合を乗じた金額を一律の期間資産計上するという納税者の事務負担に配慮した簡便的な資産計上ルールとしていることから、取扱いの見直しに当 たっては、各保険商品の実態を踏まえつつ、現行の取扱いと整合性のとれた資産計上ルールとすべきと考えられます。

 そこで、新たな資産計上ルールでは、最高解約返戻率が85%以下の商品については、各商品の実態に応じて、支払保険料の額に一定割合を乗じた金額を一律の期間資産計上するという現行の取扱いと同様の簡便なルールとします。

 これとは別に、前払部分の保険料が極めて多額となると認められる最高解約返戻率が85%超の商品については、資産計上額の累積額が前払部分の保険料の累積額に近似するよう、最高解約返戻率に応じてより高い割合で資産計上することとします。 


 なお、一般に、資産計上期間経過後においても解約返戻金がおおむね最高額となるまでは、支払保険料に含まれる前払部分の保険料は逓減するもののその累積額は増加していくことから、いずれの区分においても一定期間は資産計上額を据え置くこととし、一定期間経過後に均等に取り崩して 損金の額に算入することで、保険期間の後半に充当される前払部分の保険料と資産計上額のうち損金の額に算入される金額とが対応するような取扱いとします。 

個別通達の廃止
上記⑴の法人税基本通達9-3-5の改正等に伴い、定期保険及び第三分野保険に関する取扱い を統一することから、商品類型ごとに取扱いを定めていた個別通達を廃止します。

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