【公社債利子の所得税額控除】経過利息の授受(利付債)に関連する近年の改正動向と税務の取扱いまとめ

目次

注)本記事の内容は、記事掲載日時点の情報に基づき判断しておりますが、一若輩者の執筆であることから個別の案件での具体的な処理については責任を負いかねます旨ご理解いただきたく存じます。制度上の取扱いに言及しておりますが、個人的な見解であり、より制度深化に資すればと考えてのものです。

1.現状の法人税における所得税額控除の取扱い

現状、公社債利子から源泉徴収されている所得税の控除において所有期間按分は不要とされています。
なお、所得税額控除の趣旨、所有期間按分計算の趣旨はこちらを参照。

(1)公社債利子の所得税額控除 経過利息の授受に関する平成27年以前の取扱い

平成27年12月31日以前は、一般的な法人が指定金融機関等と既発の利付債の売買を行い、経過利子の受け渡しを行う際には、税相当額の控除を行っていました。
指定金融機関等が利付債を買い取った場合、利払期が来て利子を受け取る際に、個人や普通法人等が保有していた期間分についても所得税等の源泉徴収が行われるためです。

普通法人等が利付債の「買い手」となった場合には、次回の利子を受け取る際に、「売り手」が保有していた期間分も含めて所得税等の源泉徴収が行われる一方で、
自己が保有していない期間分については所得税額等の控除の対象となっていませんでした。

このように、買い手が利払いを受ける際に、保有期間ではなく、利払期間全期間分の源泉税(所得税等)を徴収される一方でこの所得税等の法人税等からの控除を保有期間分しか行えないとすると、
非保有期間分の所得税等は法人税等に上乗せして余計に支払っていることになります。
そのため、買い手が売り手に支払う経過利子(これは買い手が保有していなかった期間分に相当)は、 この源泉税相当額だけ少なく支払われます。
これによって、買い手は法人税等から控除できない所得税等の分を調整することができていたのです。
なお、売り手については、法人税の旧基通16―2―1(現在は廃止)において利払期前の公債又は社債を売却した場合において,その所有した期間の利子に対する所得税に相当する金額を事実上負担したときにおいても、
当該法人が所得税を納付したのではないことを理由に、当該所得税に相当する金額は、当該法人の法人税額からは控除しないとされていました。

(2)公社債利子の所得税額控除 経過利息の授受に関する平成28年以後の取扱い

現状、公社債利子から源泉徴収されている所得税の控除において所有期間按分は不要とされています。
利払期間の中途で「源泉徴収ありの法人」が利付債を購入し、その期間の利子を受け取った場合、受取利子の全額について所得税(および復興特別所 得税)の源泉徴収が行われます。
その一方で、その所得税額(および復興特別所得税額)は所有期間按分をしないため、すべて法人税額から控除できます。
これに伴い、平成28年1月1日以後、日本証券業協会や東京証券取引所などの規定が改正され、経過利子の受け渡しの際の税相当額の控除が行われなくなりました。
このため、改正後は普通法人等にとってあくまで源泉所得税は暫定的な仮払いの状態であり、 利払期間の中途で利付債を売却した場合でも、所得税等と法人税等の二重課税の問題はなくなります。
また、「売り手」の側に二重課税の問題がなくなるため、「買い手」の側にその負担が 転嫁されることもなくなります。

2.経過利息について法人税の取扱い

なお、買い手側は経過利子について、会計上は、原則として債券の取得価額に含めないとされています(金商指針57)が、法人税法上は、どちらの方法も認められています(法基通2-3-10)。
その理由は、この利子相当額が厳密には購入に要する費用に該当し、取得価額に算入すべきものと考えられる一方で、
利払期の到来により利子を収入する場合には、その全額が益金の額に算入され、
購入に際して支払つた利子相当額は償還時又は譲渡する時まで損金の額に算入されなくなり、実情に合わない面が生じるためです。

3.経過利息について所得税の取扱い

所得税においては、考え方が異なっており、
既経過利息相当額も購入の対価であることから、有価証券の取得価額に算入されるとされています(所得税法施行令第109条第1項第5号)。

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