個別対応方式における不動産登記費用(登録免許税その他登記又は登録のために要する費用の額)の用途区分判定について

目次

注)本記事の内容は、記事掲載日時点の情報に基づき判断しておりますが、一若輩者の執筆であることから個別の案件での具体的な処理については責任を負いかねます旨ご理解いただきたく存じます。制度上の取扱いに言及しておりますが、個人的な見解であり、より制度深化に資すればと考えてのものです。

1.前提・問題意識

不動産事業と登記実務は、密接に関連した業務である一方で、税務上の登記費用に関する個別対応方式関連の言及は仲介手数料などと比べるとあまりされてきていないように思います。そこで、不動産登記費用に係る論点の「法人税」周辺領域と「消費税」周辺領域を整理する意図で記載してみたいと思います。その他、関連領域は下記記事参照。

2.法人税法における不動産登記費用の考え方

(販売用)不動産の登記費用は、取得価額に含めずに経費計上することが可能な取り扱いとなっています(法人税法基本通達5-1-1の2,7―3―3の2)。

固定資産取得に係る登記費用は、厳密には取得後その権利を第三者に公示する目的であるため、取得に係る付随費用から切り離されているという理解です。
また、販売用不動産に係る登記費用は、卸資産を販売の用に供するための不可欠の費用であることから会計的にも原価性が濃く、棚卸資産の付随費用として取得価額を構成するとも考えられます。

しかしながら、不動産の取得に関連して課された不動産取得税等のように、原価性が強いと認められる租税公課等について税務的に原価外処理を認めながら、相対的には不動産の保有にかかる固定資産税や登記費用等について原価算入を強制することは必ずしも妥当ではなく,
また現実の企業経理実務においても、これらの租税等を取得価額に算入するかしないかは区々であるため、これを取得価額に算入するかしないかは,法人の選択に委ねることとされています。

なお参考として、企業会計基準第 9 号棚卸資産の評価に関する会計基準においては、棚卸資産の取得価額に原則として購入代価又は製造原価に引取費用等の付随費用を加算するとあります。一般的に会計上の判断の場合には、登録免許税などもその付随費用に含まれると考えられていると思われます。

3.消費税法の個別対応方式における不動産登記費用の考え方

前提として、
消費税法基本通達11-2-18《個別対応方式の適用方法》は、個別対応方式により仕入れに係る消費税額を計算する場合には、その課税期間中において行った個々の課税仕入れについて、必ず、課税対応、その他対応及び共通対応とに区分しなければならない旨定めています。

また、消費税法基本通達11-2-20《課税仕入れ等の用途区分の判定時期》は、個別対応方式により仕入れに係る消費税額を計算する場合において、課税仕入れを課税対応、その他対応及び共通対応に区分する場合の当該区分は、課税仕入れを行った日の状況により行うこととなる旨定めています。

先に述べた「法人税実務や企業会計実務」における不動産登記費用の考え方と、「消費税法の個別対応方式」における不動産登記費用の考え方に若干のニュアンスのズレがあるように思います。

ここで、参考となる裁決事例があります。

いわゆる個別対応方式により課税仕入れに係る消費税額を計算する場合における「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」、「その他の資産の譲渡等にのみ要するもの」及び「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」の区分は個々の課税仕入れについて行う必要があるとした事例(平成19年2月14日裁決)🔗国税不服審判所HPR6.7.4訪問(平19.2.14、裁決事例集No.73 536頁)です。

上記の裁決では、
登記費用が不動産の取得に係る付随費用として取り扱われており、また、その審判所判断における言及や関連する意見において以下の様に、法人税と消費税を切り離す点が述べられています。
このことから、【法人税法上の固定資産の付随費用の概念】と【消費税法上の用途区分の概念】はリンクせずに捉える必要があると思われます。

課税仕入れに係る消費税額は、原則として当該課税期間において控除されるものであり、法人税法等のような費用収益対応の考え方はない。したがって、(中略)仕入控除税額の計算は消費税法第 30 条に規定する方法により行うものであり、企業会計や法人税法の手続に影響されるものではない。企業会計等に基づく合理的な区分がされていることと、用途区分が行われているかどうかということは、消費税法の規定の適用においては、別の問題であると考えられる。
なお、本件土地付き建物に係る付随費用それぞれが、課税売上げと非課税売上げに共通して要する課税仕入れであれば、共通用に用途区分した上で、消費税法基本通達 11-2-19 にいう合理的な基準により、個々の課税仕入れを課税売上用と非課税売上用に区分すること(若しくは課税売上割合に準ずる割合の承認を受けること)も認められる余地があると考えられるが、本件のように課税売上用と共通用とに区分する方法は、合理的な基準として認められないものと考える。

山中 英司「個別対応方式の具体的計算方法等の在り方について」より引用。

 

すなわち、法人税法において固定資産や棚卸資産の取得原価算入を免れ経費計上することとなった不動産登記費用は、
消費税法上の用途区分を判断するフェーズにおいて、その発生の基因となった本件不動産の取得目的により判定する必要があります。

換言すれば、法人税で登記費用を経費計上した場合にはそこで一度売上との紐づきが切り離されますが、
消費税の用途区分判定において、その登記費用が課税資産の譲渡等に要するものかあるいは非課税資産の譲渡に要するものかと
いうように改めて売上との関連が基準になってくると思われます。

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