所有権移転外ファイナンス・リース取引における中途解約(違約金支払)時の消費税の考え方

目次

Ⅰ 所有権移転外ファイナンス・リース取引における中途解約時消費税処理の概要

 今回の記事は、上記所有権移転外リース取引のうち、 特に借り手(リース物件ユーザー)に着目して、中途解約時の消費税処理について記載しようと考えています。リース取引は、現況広く業種の区別なく利用されている取引形態であることから、その会計上・税務上の処理については広く普及しているところですが 、深く考察しようとすると各制度・各立場により取扱が異なり、混乱を招く制度であることに思い至ります。 

 リース税制が一見わかりにくく見えるのは、賃貸人(貸し手)と賃借人(借り手)で整合的に取り扱うというよりもそれぞれの立場による事情や企業会計の取扱いと平仄をあわせることで賃貸人と賃借人いずれの側にもバリエーションが多い事が原因ではないかと言われています。企業会計基準、法人税、消費税そのそれぞれにリース取引に関する規定があり、各々に考える必要があります。さらには、税務の取扱いが会計を暗に容認しているところがあり、複雑さに拍車をかけています。 

 そのような中で、一番の疑問点は税務上、借り手への配慮が最大限なされて制度設計されているのか、また運用されているのかという点です。
あくまで私見ですが、企業会計と税制の相違による歪みが、結果として借り手にとって不利となっている感があるような気が致します。 実務において当該疑念が沸き起こるのですが、調べる過程でその件に言及している文献や書籍はごく少ないように感じます。税務的にグレーな規定であれば、性善説に立つ限り、納税者は、保守的な処理として自ら不利になる処理を行わざるを得なくなってしまうのではないでしょうか。加えて制度設計者とリース会社の連携についても連携の綻びを個人的に感じるところです。個々の契約において各社自由な契約をなすことは当然に認められることですが、本来制度上意図された表現に見合う内容の取引かどうかを納税者が契約の都度個別に判断していくのは、前に述べた制度の複雑性はもとより事務手数を鑑みても、不親切さを禁じ得ないと思います。具体的には、「損害金」や「違約金」などの名目を実質的に判断していく処理が必要となるものと思われます。

 さて、所有権移転外ファイナンス・リース取引における中途解約時の消費税処理において税務判断のポイントは、リース資産・リース債務の残存簿価の取扱いと中途解約金(違約金・解約損害金)が別の概念であると観念する点にあると考えます。以下、具体的な取り扱いについて見ていきたいと思います。 
 なお、実務上、リース会社における中途解約金の算定根拠に、残存リース料が含まれている事があります。また、合意解除であっても、中途解約金を支払うケースがあるように思われます。これらの点については、おそらく根が深く相当程度の研究を要すことが想定されます。

Ⅱ 所有権移転外ファイナンス・リース取引における中途解約時消費税処理の具体的取扱

1. 所有権移転外ファイナンス・リースの解約損害金の取扱

まず、原則的な考え方として、被った損害に対しての支払いは対価性がないものとみなされ 消費税の課税の対象とはなりません。例外として、実質的に売買等と同様の性格を有すものは、消費税の課税の対象となります。

【参考規定】

消基通5-2-5

①. リース物件の消滅によりユーザーから徴収する損害金

課税対象外 

理由:損害賠償金であり、対価性がないため。

②. ユーザーの倒産などによりリース物件を引き揚げ、ユーザーから徴収する損害金

課税対象外 

理由:逸失利益に係る保証金であるため。

③. グレードアップ等を図るため、合意解約したユーザーから徴収する損害金

課税対象

理由:解約までのリース料の増額修正であるため。

2. 所有権移転外ファイナンス・リース取引に係る残存リース料の取扱い

①. リース物件が滅失・毀損し、修復不能となった時

・残存リース料の支払いがある場合
課税対象外  (理由:残存リース料の支払いはリース債務の返済に過ぎないため。) 
残存リース料の一部・全額が減額される場合
仕入れにかかる対価の返還  (理由:リース料の値引があったと認められるため。)

②. 賃借人の倒産などの契約違反が合った場合

・残存リース料の支払いがある場合
課税対象外  (理由:残存リース料の支払いはリース債務の返済に過ぎないため。) 
・残存リース料の支払いがない場合
債務の消滅額を対価とする資産の譲渡  (理由:代物弁済による資産の譲渡であるため。)

③. リース物件の陳腐化のための借換えなどにより、賃貸人と賃借人の合意に基づき解約する場合

・残存リース料の支払いがある場合
課税対象外  (理由:残存リース料の支払いはリース債務の返済に過ぎないため。) 
・合意に基づき、リース物件を廃棄するとともに、残存リース料の一部・全額を減額する場合
仕入れにかかる対価の返還  (理由:リース料の値引があったと認められるため。)

【参考規定】

・ 消費税法第16 条第2 項
・ 消費税法施行令第32 条第1 項、第36 条の2 第3 項、第45 条第2 項第1 号
・ 法人税法第63 条第1 項、第64 条の2 第1 項、同第3 項
・ 法人税法施行令第125 条第1 項、同第2 項
・ 消費税法基本通達9-3-6 の3、同11-3-2

 

Ⅲ 私見

 第一に、かなり調べているつもりですが所有権移転外リース取引の解約時の処理において、上記1.と2.における取扱を同時に・網羅的にどのように処理するか端的に答えている文献が無いように思います。

1.についてはほかにも、制度については通常一般的な損害賠償金に係る規定をリース取引にあてはめたものと考えますが、実務上は、残存リース料の概念と解約違約金の概念が混同(または同視)されて取引されている感があると思っています。

さらに、実務上個人的に混乱するのは、以下の様な取引です。旧ファイナンスリース契約(旧税率の適用を前提)の残債を合意解除によってキャッシュで支払う場合には中途解約に伴って借手が支払う残存リース料は消費税の課税対象とはなりませんが、月額リース料とあわせて消費税を支払う契約においては、中途解約日以後のリース期間分の消費税額が未払いのため、借手は、当該消費税相当額を貸手に支払うこととなります。すなわち、旧税率算定された債務額をベースに取引されます。その一方で、旧リース取引の残債分を新リース契約に組み込む場合が実務上見受けられます。この場合、旧リース取引の残債部分は新リース契約に組み込まれたところで新税率が課せられているケースがあるという点です。新リースの契約の内部計算上、旧リース分が含まれている際には、実質的な税率と形式的な税率が矛盾するように思えます。

上記1.と2.における①~③の場合分けは、それぞれ同じ状況を想定していると思われますが、確定的ではありません。今後、追加の情報があれば更新したいと考えています。

 第二に、1.③及び2.③における「合意解除」の概念が判断の上で重要であると考えます。グレードアップを図る目的以外の合意解除についても当該区分に含まれるか確定的ではありません。

Ⅳ 参考情報

・「リース取引の税務上の取扱いに関するQ&A【消費税編】」,Q6,社団法人リース事業協会,平成21.12.14。

・『リース税制』[第二版]朝長英樹🔗編,法令出版,平成24年11月15日。

公益社団法人リース事業協会HP🔗

国税庁HP,質疑応答「所有権移転外ファイナンス・リース取引に係る残存リース料の取扱い」🔗

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