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注)本記事の内容は、記事掲載日時点の情報に基づき判断しておりますが、一若輩者の執筆であることから個別の案件での具体的な処理については責任を負いかねます旨ご理解いただきたく存じます。制度上の取扱いに言及しておりますが、個人的な見解であり、より制度深化に資すればと考えてのものです。
Ⅰ.前提 居住用賃貸建物の効果
居住用賃貸建物の定義や制度成立過程については以下の記事を参照ください。
消費税法における居住用賃貸建物について、簡潔にその意義をまとめると以下の様になります。
- 居住用賃貸建物は、仕入時の消費税を控除に使えない
- 居住用賃貸建物の判断は、構造が居住用かどうかを勘案する
- 不動産屋が販売目的で仕入れた場合でも、入居者付の場合は居住用賃貸建物に当てはまる可能性がある
Ⅱ.民泊の場合の取扱い
Ⅱ-1.論理フロー
民泊サービスの内容や詳細な制度は割愛するとしまして、その消費税法における取扱いは以下の様になっていると思われます。
1. 構造が居住用なので、民泊届出に関係なく居住用賃貸建物に該当するが、、、、※1
2. 調整計算で3年後に控除できる。ただし、 ※2
3. 下の計算式が厄介

※1 税務通信3637号「民泊用建物 居住用賃貸建物に該当するも調整規定の対象」2021年01月11日,令和7年5.23閲覧。
国税庁HP質疑応答事例「居住用賃貸建物を取得後一定期間内に民泊サービスの用に供した場合」🔗R7.5.23訪問。
※2 消法35の2①,消令53の2
Ⅱ-1.調整計算の例
<調整計算の例> 第3年度の課税期間(X2年3月期に対応する課税期間)の仕入控除税額に加算
居住用賃貸建物の課税仕入れ等に係る消費税額:500万円
居住用賃貸部分の賃料合計:180万円
課税賃貸用(民泊サービスの用)に供した部分の賃料:20万円
○第3年度の課税期間(X2年3月期に対応する課税期間)の仕入控除税額に加算する消費税額=

(注)調整期間とは、居住用賃貸建物の仕入れ等の日から第3年度の課税期間(X2年3月期に対応する課税期間)の末日までの間をいいます。
なお、複数の居住用賃貸建物がある場合、下記条文を読むに、この調整計算を居住用賃貸物件毎に行うように読めます。
(参考)消費税法第35条の2 居住用賃貸建物を課税賃貸用に供した場合等の仕入れに係る消費税額の調整
事業者(第9条第1項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)が、居住用賃貸建物に係る課税仕入れ等の税額について第30条第10項の規定の適用を受けた場合において、当該事業者(相続により当該事業者の当該居住用賃貸建物に係る事業を承継した相続人、合併により当該事業を承継した合併法人及び分割により当該居住用賃貸建物に係る事業を承継した分割承継法人を含むものとし、これらの者のうち第9条第1項本文の規定により消費税を納める義務が免除される者を除く。以下この項において同じ。)が第3年度の課税期間の末日において当該居住用賃貸建物を有しており、かつ、当該居住用賃貸建物の全部又は一部を当該居住用賃貸建物の仕入れ等の日から第3年度の課税期間の末日までの間(次項及び第3項において「調整期間」という。)に別表第二第13号に掲げる住宅の貸付け以外の貸付けの用(第3項において「課税賃貸用」という。)に供したときは、当該有している居住用賃貸建物に係る課税仕入れ等の税額に課税賃貸割合を乗じて計算した金額に相当する消費税額を当該事業者の当該第3年度の課税期間の仕入れに係る消費税額に加算する。この場合において、当該加算をした後の金額を当該課税期間における仕入れに係る消費税額とみなす。