【図解・ケースで学ぶ】消費税の個別対応方式とは?基礎と実務ポイントまとめ

注)本記事の内容は、記事掲載日時点の情報に基づき判断しておりますが、一若輩者の執筆であることから個別の案件での具体的な処理については責任を負いかねます旨ご理解いただきたく存じます。制度上の取扱いに言及しておりますが、個人的な見解であり、より制度深化に資すればと考えてのものです。

前提・個別対応方式とは

消費税申告において「個別対応方式」は、

課税期間中の課税売上高が5億円超の場合、又は課税売上割合が95%未満の場合に、その課税期間中の課税仕入れ等に係る消費税額の全てを、

イ 課税売上げにのみ対応するもの
ロ 非課税売上げにのみ対応するもの
ハ 課税売上げと非課税売上げに共通するもの

に区分し、次の算式により計算した仕入控除税額をその課税期間中の課税売上げに係る消費税額から控除する方式をいいます。

  (算式)仕入控除税額 = イの消費税額 + (ハの消費税額 × 課税売上割合)

正しく理解すれば節税にもつながるため、特に中小企業やフリーランスの方にとって実務上重要だと考えます。ただ、その制度がやや複雑なため、その説明に苦労することがままありますので、以下に整理してみました。

本記事では、図解や具体的なケーススタディを交えて分かりやすく解説します。

◆ 個別対応方式とは?【図解】

仕入に係る消費税を控除するにあたって、仕入の用途に応じて以下のように区分します。

【仕入の用途区分】

課税売上対応仕入 全額控除可
非課税売上対応仕入 控除不可
共通対応仕入 課税売上割合で按分

上記の区分は、課税仕入れを行った日において「その課税仕入れが、どの売上げ(課税売上げ・非課税売上げ・それ以外)のために行ったものなのか?」という用途により売上との紐づけ・関連性から判定をします。つまり、各個の仕入について個別にどの売上を生むためのものかという観点から、売上と対応させ、上記の3種類に区分します。

例えば、株式を売却するために証券会社に売買手数料を支払う場合、証券会社に支払う売買手数料は消費税が課税される課税仕入取引です。

この課税仕入れが「どの売上げ(=用途)のために支出されたのか」という観点から区分すると、株式を売却するための支出です。

株式などの有価証券の譲渡は、消費税が課税されない非課税売上取引です。

したがって、この売買手数料は、非課税売上げに対応する課税仕入れ(非課税売上対応)と判断されます。

【個別対応方式全体のイメージ】

◆ 具体的なケーススタディ

ケース1:コンサル業(95%以上が課税売上・課税売上5億円超)

  • コピー用紙、水道光熱費、人件費など共通対応仕入がある

  • 課税売上割合が97% → 共通対応仕入の97%が控除可

計算例:

  • 共通仕入消費税額 100,000円 × 97% = 97,000円が控除対象

ケース2:不動産賃貸業(課税売上割合が70%)

  • 駐車場収入(課税)、住居賃貸収入(非課税)

  • 共通費用(修繕費など)については70%のみ控除可能

◆ よくある共通対応仕入の例

費用科目内容例処理のポイント
水道光熱費オフィス全体で使用課税売上割合で按分
通信費電話・ネット用途の区分が難しい場合は共通対応
人件費経理・総務人件費勤務実績から合理的な按分が必要

◆ 適用できる条件と注意点

✅ 適用条件

  • 個別対応方式を採用する場合には届け出書を提出する必要はなく、継続適用することも要件ではありませんが、消費税確定申告書に個別対応方式による計算の旨を付記する必要があります。

  • 課税売上割合が95%未満であること・課税売上が5億円超であること(95%以上の場合は全額控除)

◆ まとめ:実務上の対応フロー

【1】仕入れ内容の用途を判断
   ↓
【2】課税仕入れを課税対応・非課税対応・共通対応したものを帳簿に反映
   ↓
【3】共通仕入は課税売上割合で按分
   ↓
【4】仕入税額控除へ

なお、実務上、【1】における判断が非常に難しい場合があります。

「仕入税額控除制度における用途区分の再検討-ADW事件最高裁判決から考える- 【第2回】」栗原 宏幸Profession Journal No.618(2025年05月15日)にも以下の様な言及があります。

消費税法の条文は、課税仕入れの3つの区分を「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」、「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」、「その他の資産の譲渡等にのみ要するもの」と定義するが(同法30条2項)、これらに共通する「に・・・要する」の意味は、その文理から一義的に明らかであるとはいえず、用途区分の判断を、どのような観点から、どのような事実ないし状況を考慮して行うべきかが、これらの定めから明らかであるとは言い難い

 

私自身も、実務上、判断に迷う内容や考察した内容を以下の記事に記載しています。

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