役員に交付される譲渡制限付株式報酬(事前交付型リストリクテッド・ストック)の税務的な検討

目次

1.事前交付型リストリクテッド・ストックとは

注)本記事の内容は、記事掲載日時点の情報に基づき判断しておりますが、一若輩者の執筆であることから個別の案件での具体的な処理については責任を負いかねます旨ご理解いただきたく存じます。制度上の取扱いに言及しておりますが、個人的な見解であり、より制度深化に資すればと考えてのものです。

 リストリクテッド・ストックとは、自社の株式を役員などに直接付与する株式報酬制度の一種で、株式報酬制度としては最も一般的な形態です。

リストリクテッド・ストックには、事前交付型と事後交付型のものがあります。

事前交付型とは、職務執行開始後速やかに譲渡制限の付いた株式を交付する形態のものを指し、

事前交付型リストリクテッド・ストックが該当します。

ここでいう「譲渡制限」は、会社法の非公開会社における譲渡制限よりもさらに厳格で、

期限到来まで譲渡ができないといった要件が付されているものが一般的と理解しています。

上述の株式報酬が世間から関心をもたれ、その仕組みが作られてきた趣旨は、

簡潔に言えば経営者のインセンティブを高める制度のニーズがあったためだと思われます。

役員にとっては、株式の交付を受けた後、職務執行を通じて株価を上昇させることが、

ひいては譲渡制限が解除された際の自らの職務の見返りの価値に繋がるためです。

経済産業省の検討過程においては、

国際的な動向を踏まえた場合に本国は諸外国に比べ役員給与に占める固定報酬の割合が高く、

役員給与に関して業績向上のインセンティブが十分に働いていないことが指摘されてきました。

(参考:『「攻めの経営」を促す役員報酬-企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引-』を改訂しました🔗

そこで、業績連動を含む経営陣への適切なインセンティブ報酬を付し、

我が国企業の「稼ぐ力」の向上を目指すために、政府よりコーポレートガバナンスの強化が掲げられ、

金銭だけでなく株式による報酬支給を可能とする仕組みが整理されてきました。

例えば、「コーポレートガバナンス・コード~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~(平成27年6 月1 日適用開始)」においては、

「(前略)経営陣の報酬については、中長期的な会社の業績や潜在的リスクを反映させ、健全な企業家精神の発揮に資するようなインセンティブ付けを行うべきである(原則4 - 2 .取締役会の役割・責務⑵ 経営陣報酬へのインセンティブ付け)。」

及び「経営陣の報酬は、持続的な成長に向けた健全なインセンティブの一つとして機能するよう、中長期的な業績と連動する報酬の割合や、現金報酬と自社株報酬との割合を適切に設定すべきである(補充原則4 - 2 ① 中長期の業績に連動する報酬・株式報酬の活用促進)。」

と規定されています。

以上のような時流により、最近では自社株式を報酬として付与する株式報酬制度を導入する上場会社が増えてきているように思います。

2.会計及び税務の取扱い

①前提

上記目的や趣旨に基づく、制度改正の中で、それを取り巻く周辺領域が難解に(少なくとも私にとっては)整理されているため、

処理の結論を簡潔に記載する目的で本稿を作成しています。種々の状況下での体系的な制度の記載には紙面が足りず、

一般的に行われているであろう株式報酬制度を前提に以下、簡潔な結論を記載しますのでご注意ください。

前提が少しでも変わると処理の結論も異なってくる点ご配慮頂けたらと思います。改正の経緯や規程の整理が複雑さは、

後述を参照ください

とりわけ最下部に理解の要旨を記載しています。 

②結論まとめ(個別具体的な取り扱いは注意)

 役務提供時制限解除時
会計株式報酬費用認識なし
税務法人税認識なし事前届必要ない事前確定届
申告加算調整申告減算調整
所得税認識なし退職手当(所基通23-35共-5の2(1))

将来の期間における役務提供の対価としての譲渡制限付株式交付給与かつ提供期間に報酬費用としての損金経理が行われていることを前提にします。

3.私見まとめ:結論導出過程・解釈及び混同しやすい点

①損金に算入できる役員報酬とは

まず、法人が役員に対して支給する給与(注)の額のうち次に掲げる定期同額給与、事前確定届出給与または業績連動給与のいずれにも該当しないものの額は損金の額に算入されません。(法34①)

ただし、次に掲げる給与のいずれかに該当するものであっても、

不相当に高額な部分の金額は、損金の額に算入されません。

(注)上記の給与からは、

(1)退職給与で業績連動給与に該当しないもの

(2)左記(1)以外のもので使用人兼務役員に対して支給する使用人としての職務に対するものおよび

(3)法人が事実を隠蔽し、または仮装して経理することによりその役員に対して支給するもの

は除かれます。

退職給与については,役員の退職の時期について不確実性があり事前の手続の対象とすることは

制度上難しいといつた理由により対象から除かれていましたが、平成29年度の税制改正において,

役員に対する退職給与については,

退職を基因として支給するか否かで損金算入要件が大きく異なるのは制度として不整合ともいえるため,

業績連動給与に該当するものについて,

当該損金算入要件を満たさないものは損金不算入とする見直しがなされています。

基本的に、

定期同額給与、事前確定届出給与及び一定の業績連動給与のの3 類型に該当するものだけが損金の額に算入されることになっています。

ただ、上記注書きのように、「退職給与で業績連動給与に該当しないもの」はそもそも損金算入の制限対象となっていないので、

3類型に該当せずとも損金算入が可能となります。

②退職給与で業績連動給与に「該当しないものには該当しない」

さて、リストリクテッドに関する重要な規定に法人税法基本通達9-2-27の2逐条解説がありますが、

個人的に非常に難解であると思います。以下、長くなりますが、引用致します。

一部改正〔平成19年課法2―3〕
(退職給与に該当しない役員給与)
基通9―2―27の2 役員の将来の所定の期間における役務提供の対価として譲渡制限付株式又は譲渡制限付新株予約権が交付される給与(法第34条第5項⦅役員給与の損金不算入⦆に規定する業績連動給与に該当するものを除く。)であって,その役務提供を受ける法人においてその期間の報酬費用として損金経理(退職給付引当金その他これに類するものの繰入れに係るものを除く。)が行われるようなものは,例えばその譲渡制限付株式に係る譲渡制限期間の満了日又はその譲渡制限付新株予約権を行使することができる期間の開始日がその役員の退任日であることによりその役員において所得税法第30条第1項⦅退職所得⦆に規定する退職手当等に該当するものであっても,法第34条第1項の退職給与で業績連動給与に該当しないものには該当しない。
追加〔令和3年課法2―21〕

注 釈
1 本通達は,法人からその役員に対して将来の所定の期間における役務提供の対価として譲渡制限付株式又は譲渡制限付新株予約権が交付される給与であつて,その期間の報酬費用として損金経理が行われるようなものは,退職給与には該当しないことを明らかにしたものである。
2 法人がその役員に対して支給する給与(退職給与で業績連動給与に該当しないもの等を除く。)のうち,定期同額給与,事前確定届出給与及び一定の業績連動給与のいずれにも該当しないものの額は,損金の額に算入しないこととされている(法34条1項)。
退職給与については,役員の退職の時期について不確実性があり事前の手続の対象とすることは制度上難しいといつた理由により対象から除かれていたが,平成29年度の税制改正において,役員に対する退職給与については,退職を基因として支給するか否かで損金算入要件が大きく異なるのは制度として不整合ともいえるため,業績連動給与に該当するものについて,当該損金算入要件を満たさないものは損金不算入とする見直しがなされている。
また,損金算入の対象となる給与のうち事前確定届出給与とは,役員の職務につき所定の時期に確定した額の金銭又は確定した数の株式若しくは新株予約権等を交付する旨の定めに基づき支給する給与で,定期同額給与及び業績連動給与のいずれにも該当しないもののうち,一定の届出期限までに事前届出をしている給与又は届出不要の要件を満たす給与等とされている。
ここでいう届出不要の要件とは,職務執行開始日から1月を経過する日までに株主総会等の決議による定め(その決議日から1月を経過する日までに特定譲渡制限付株式(法54条1項)又は特定新株予約権(法54条の2第1項)を交付する旨の定めに限る。)がされ,その定めに従つて交付されていること等とされている。この要件は,事前確定届出給与の届出期限までに特定譲渡制限付株式又は特定新株予約権が事前交付されている場合には,改めてその給与に係る届出は不要とするというものである。
3 法人税法第34条第1項⦅役員給与の損金不算入⦆における損金算入制限の対象から除外される「退職給与で業績連動給与に該当しないもの」については,業績連動給与についての定義は置かれているものの(法34条5項),退職給与については明文の定めは存在していない。過去の裁判例では,「役員が会社その他の法人を退職したことによつて支給され,かつ,役員としての在任期間中における継続的な職務執行に対する対価の一部の後払いとしての性質を有する給与であると解すべき」と判示されている(平成29年7月12日東京高裁判決参照)。
実務上は,所得税法第30条第1項⦅退職所得⦆の退職手当等を参照して,退職手当,一時恩給その他の退職により一時に受ける給与及びこれらの性質を有する給与を支払側からみて同様に取扱うことが一般的であつた。また,所得税基本通達30―1⦅退職手当等の範囲⦆において,退職手当等とは,本来退職しなかつたとしたならば支払われなかつたもので,退職したことに基因して一時に支払われることとなつた給与をいうこととされており,これを支払側からみて同様に解釈することが一般的であつた。
4 令和元年に取締役の報酬に関する規律の見直し等を目的とした会社法の改正(令和元年法律第70号)が行われ,上場会社において取締役又は執行役の報酬として株式を発行する場合には出資の履行を要しないこととする(会社法202条の2)等の改正が行われた。そして,この改正を受けて会社計算規則の改正が行われ,また企業会計における実務対応報告が公表され,取締役の報酬等として出資の履行を要しないで株式の交付をする場合における会計処理については,株式の交付が行われるタイミングに応じ事前交付型(取締役等が株式会社に対し割当日後にその職務の執行として役務を提供するもの)と事後交付型(取締役等が株式会社に対し割当日前にその職務の執行として役務を提供するもの)とに区分し,その取扱いが定められた。
具体的には,事前交付型の株式報酬については,割当日においては払込資本を増加させず(実務対応報告40),企業が取締役等から取得するサービスはその取得に応じ費用として対象勤務期間に配分して計上し(実務対応報告5~8),計上される費用に対応する金額を資本金又は資本準備金に計上することとされた(実務対応報告9,会社計算規則42の2)。
また,事後交付型の株式報酬については,企業が取締役等から取得するサービスは事前交付型と同様にその取得に応じ費用として対象勤務期間に配分して計上し,対応する金額は,株式の交付が行われるまでの間,貸借対照表の純資産の部の株主資本以外の項目に株式引受権として計上し(実務対応報告15,会社計算規則54の2),割当日に,株式引受権として計上した金額を資本金又は資本準備金に振り替えること等とされた(実務対応報告16,会社計算規則42の3)。
このように会社法の改正並びにそれを受けた会社計算規則の改正及び実務対応報告の公表により取締役の報酬等として出資の履行を要しないで株式の交付をする場合における会計処理が明らかにされたことを踏まえ,それらと整合的になるように税制改正が行われたものである。
5 今般の取締役の報酬等に関する規律の見直しに係る会社法等の整備を踏まえれば,出資の履行を要しないで譲渡制限付株式を交付する場合には,その譲渡制限付株式の公正な評価額を役務の提供期間に応じてあん分し,役員による役務提供の取得に応じて報酬費用を計上し,その費用計上額に対応した資本金等の額又は株式引受権の額を増加させるという処理を行うということになる。このように役務提供期間に応じて報酬費用が計上されるという処理は,従来のように退職給与として一時に費用処理(又は退職給付引当金の取崩し)がなされるという処理とは異なる。このため,役務提供期間に応じて報酬費用が計上されるという処理は,一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて所得計算されるとする法人税法の建付けからしても,法人税法第34条第1項の退職給与には該当しないとすることが妥当である。
このため,役員の将来の所定の期間における役務提供の対価として譲渡制限付株式が交付される給与であつて,その役務の提供を受ける法人においてその期間の報酬費用として損金経理が行われるようなもの,具体的に言えば,今般の実務対応報告に基づいて会計処理が行われるようなものは,例えばその譲渡制限付株式に係る譲渡制限期間の満了日がその役員の退任日であることによりその役員において所得税法第30条第1項に規定する退職手当等に該当するものであつても,法人税法第34条第1項の退職給与で業績連動給与に該当しないものには該当しないことを明らかにしている。
なお,前提として業績連動給与に該当するものは除いている。すなわち,退職給与等以外で法人税法第34条第1項の役員給与の損金算入制限を受けないためには,定期同額給与,事前確定届出給与又は一定の業績連動給与のいずれかに該当する必要があるが,本件のように譲渡制限付株式が交付される給与は通常は定期同額給与の対象にはならないと考えられ,また,業績連動給与に該当しないことが前提なので,事前確定届出給与に該当するものについて,届出期限内に届出書を所轄の税務署長に提出するか,届出不要の要件を満たす必要があるということになる。
6 ここで,将来の所定の期間としている趣旨は,基本通達9―2―15の2⦅過去の役務の提供に係るもの⦆において役員の過去の役務提供の対価として譲渡制限付株式が交付される給与については事前確定届出給与には該当しないとしていることとのバランスからであるが,必ずしも事前交付型のみを対象にしているわけではなく,事後交付型であつても報酬の定めをする時点において将来の所定の期間における役務提供の対価として事後的に交付することが定められたものであり,その期間の報酬費用として損金経理が行われているようなものであれば対象となることを明らかにしている。
7 なお,企業会計基準第8号「ストック・オプション等に関する会計基準」において,今般の実務対応報告に基づく会計処理と同様の会計処理がなされており,本通達を設けた趣旨からしても税務上の取扱いを異にする理由がないため,本通達の対象に含めている。具体的には,例えばその譲渡制限付新株予約権に係る株式の交付を受ける権利行使期間の開始日がその役員の退任日であることによりその役員において所得税法第30条第1項に規定する退職手当等に該当するものであつても,法人税法第34条第1項の退職給与で業績連動給与に該当しないものには該当しないことを明らかにしている。
また,現物出資構成による株式報酬については,企業会計上の処理は明らかとされてはいないが,今般の実務対応報告と同様の会計処理がなされているのであれば,税務上の取扱いを異にする理由がないため,本通達の対象となる。具体的には,将来の所定の期間における役務提供の対価として役員に生ずる債権の給付と引き換えに譲渡制限付株式が交付された場合において,前払報酬として計上された額を所定の役務の提供期間に応じてあん分し,役員による役務提供の取得に応じて報酬費用を計上し,その費用計上額に対応して前払報酬として計上された額を取り崩す処理が行われる場合には,本通達における報酬費用として損金経理が行われるようなものに該当する。
8 本通達の取扱いは,事前確定届出給与の届出期間の始期が職務執行開始日の属する会計期間開始の日から始まること等を踏まえ,法人が令和3年6月25日以後に開始する会計期間においてその支給に係る決議(当該決議が行われない場合には,その支給)をする給与について適用し,法人が同日前に開始した会計期間においてその支給に係る決議(当該決議が行われなかつた場合には,その支給)をした給与については,なお従前の例によることとしている。

その他参考FASF/ASBJ/SSBJサイト実務対応報告第41号 「取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い」等の公表

なお、株式無償交付によるスキームの場合には実務対応報告第41号に従って開示を行う必要があります。

また、同報告「公表に当たって」より会計処理についての定めを下記に一部引用致します。

事前交付型(本実務対応報告第 4 項(6)、同項(7)及び同項(16))

本実務対応報告では、取締役の報酬等として株式を無償交付する取引のうち、対象勤務期
間の開始後速やかに、契約上の譲渡制限が付された株式の発行等が行われ(会社法における
割当日)、権利確定条件が達成された場合には譲渡制限が解除されるが、権利確定条件が達
成されない場合には企業が無償で株式を取得する(以下、無償取得することが確定すること
を「没収」という。)取引を事前交付型と定義している。新株の発行により行う場合と自己
株式の処分により行う場合が想定されるため、それぞれ会計処理を定めている。

新株の発行により行う場合の会計処理
割当日における取扱い(本実務対応報告第 40 項)
当初の割当日において新株を発行し発行済株式総数が増加するが、その時点では資
本を増加させる財産等の増加は生じていないことから、割当日には払込資本を増加さ
せない。

対象勤務期間における取扱い(本実務対応報告第 5 項から第 10 項)
ストック・オプション会計基準と同様に、企業が取締役等から取得するサービスは、
その取得に応じて費用として計上する。各会計期間における費用計上額は、株式の公
正な評価額のうち、対象勤務期間を基礎とする方法その他の合理的な方法に基づき当
期に発生したと認められる額とする。
また、当該処理により年度通算で費用が計上される場合は対応する金額を資本金又
は資本準備金に計上し、年度通算で過年度に計上した費用を戻し入れる場合はその他
資本剰余金から減額する。
なお、四半期会計期間においては、計上される損益に対応する金額はその他資本剰
余金の計上又は減額として処理し、年度の財務諸表においては、上記の処理に置き換
える。

③逐条解説の解読・個人的解釈及び混同しやすい点

この通達改正の要旨は、「事前確定」的な性格であり「退職金」的なものは、

法人税法上、結論「役員給与」の損金算入の制限を受けますよ、ということだと思います。

読み方が難しいですが、通達の「業績連動給与に該当しないものには該当しない」とは、

役員報酬の損金算入の規制の範囲であることを意味していると思います。

そして、実務対応報告が想定するような譲渡制限付株式報酬制度(事前交付型リストリクテッド・ストック)を考えたときに、

役員報酬の損金算入の論点の中では、定期同額でなく、業績連動でもないものが前提であるため、

事前確定の要件を満たして初めて、損金算入を認めるということです。

さらに、損金算入可能な事前確定給与に該当させる場合には、

届出期限内に届出書を所轄の税務署長に提出するか,届出不要の要件を満たす必要があるということです。

事前交付型リストリクテッド・ストックの性質は、事前確定的であり、

退職金的であるが、期間対応の役務提供的でもあります。従来は退職金的性格に着目していたものを、

事前確定的性格に着眼することにし、

もって損金算入には事前確定に該当するための要件を必要とする整理を行ったのであります。

そして、その反射としてというか前提としてあくまで法人税法上のみ、

退職手当でなく給与とみていくということだと思います。

私が誤解しがちなのは、上述の議論は、損金算入の可否の問題であって、

損金算入の時期の議論とは別であるということです。

役員給与として譲渡制限付株式が交付された際、その譲渡制限付株式に係る損金算入時期は、

「給与等課税額が生じることが確定した日」とされ(法法54①、法令111 の2③)、

これは「無償取得しないことが確定した日」を意味します。

実務上は、「無償取得しないことが確定した日」と「譲渡制限解除日」および「退任日」が同日になるように設計することが一般的ですので、

譲渡制限が解除された日の属する事業年度に損金算入されることとなります。

すなわち、損金算入の可否は株式交付時に事前確定しているかどうかで判断され、

損金算入の時期は、譲渡制限が解除される退任日となり、

可否の判断と算入の時期にタイムラグがあります

また、さらに混同しがちである点が、上述のような通達改正は法人税法上の損金算入制限の論点であるため、

株式の交付を受けた役員サイドの話(所得税法上の話)では譲渡制限付株式に係る譲渡制限期間の満了日又はその譲渡制限付新株予約権を行使することができる期間の開始日がその役員の退任日であることによりその役員において所得税法第30条第1項⦅退職所得⦆に規定する退職手当等に該当するものが存在するということです。

この点、法人税法上は役員給与とみて、所得税法上は退職所得と見るという二面性を孕んでいます。

会社法が経済発展のため役員のインセンティブに融通を持たせようとする考え方と会計上の期間費用の考え方、

及び税務が拠って立つ確定主義など関連領域全般に整合性を取るように設計されていると理解するところですが、

そうであるがゆえに、結論に至るまでの経緯が複雑でそれを理解することが困難になってきています。

税務上の処理で整理しておきたいのは、

損金算入できるかどうか損金算入時期はいつか・またどの税目での話であるかという観点からだと思われました。

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