目次
注)本記事の内容は、記事掲載日時点の情報に基づき判断しておりますが、一若輩者の執筆であることから個別の案件での具体的な処理については責任を負いかねます旨ご理解いただきたく存じます。制度上の取扱いに言及しておりますが、個人的な見解であり、より制度深化に資すればと考えてのものです。
Ⅰ.はじめに
法人を設立する際、定款に「会計期間(事業年度)」を定めますが、誤って1年を超える期間を設定してしまった場合、また設立後第1期の期間が短いためにこれを独立の会計期間とせず、次の会計期間に吸収してしまうような定款の定めをする結果、会計期間が1年を超えることがあります。
実務経験上、先日この事例に出くわしました。定款を司法書士などの専門家が作成する場合には、上記のような状況にある程度の配慮がされるみたいですが、法人税実務に馴染のない方がご自身で定款を作成される場合には、あり得るケースのようです。また、そのような定款を作成後、法人の登記手続きが進められてしまいます。
この場合には、法人税法上の事業年度の規定との関係に注意が必要です。
Ⅱ.事業年度は最長で1年まで:法人税法の原則
法人税法上の事業年度は、次のように定められています。
法人税法第13条第1項
「この法律において「事業年度」とは、法人の財産及び損益の計算の単位となる期間(以下この章において「会計期間」という。)で、法令で定めるもの又は法人の定款、寄附行為、規則、規約その他これらに準ずるもの(中略)に定めるものをいい、法令又は定款等に会計期間の定めがない場合には、次項の規定により納税地の所轄税務署長に届け出た会計期間又は第3項の規定により納税地の所轄税務署長が指定した会計期間若しくは第4項に規定する期間をいう。ただし、これらの期間が1年を超える場合は、当該期間をその開始の日以後1年ごとに区分した各期間(最後に1年未満の期間を生じたときは、その1年未満の期間)をいう。」
筆者下線追記。
すなわち、事業年度は最長で1年(12か月)までと規定されているため、1年に区切る必要が生じます。
以下は、そのイメージ図です。

Ⅲ.問題解決の手段
パターン1:定款変更により初年度を短縮する
株主総会決議により定款変更を行い、決算月を前倒しすれば初年度が1年未満となります。
この場合には、登記の際に利用した定款を即座に変更するという形になってしまいます。
パターン2:三年目以降で整合性を取る
注意すべきは、法人の決算期に関わらず期首から1年で区分するという点です。
具体的には、下記のような事例です。
■ 定款上の会計期間
2025年11月1日 ~ 2026年12月31日(1年2か月)
■ 法人税法上の事業年度の扱い
事業年度1:2025年11月1日 ~ 2026年10月31日(12か月)
事業年度2:2026年11月1日 ~ 2026年12月31日(2か月)
事業年度3:2027年1月1日 ~ 2027年12月31日(12か月)
定款の会計期間 | 第1期 | 2025年11月1日 ~ 2026年12月31日(1年2か月) |
法人税法上の事業年度 | 第1期 | 2025年11月1日 ~ 2026年10月31日(12か月) |
第2期 | 2026年11月1日 ~ 2026年12月31日(2か月) | |
第3期 | 2027年1月1日 ~ 2027年12月31日(12か月) |
■ 3年目で整合を図る場合の取扱いまとめ
項目 | 内容 |
---|---|
定款記載期間 | 2025年11月1日~2026年12月31日(1年2か月) |
法人税の申告単位 | 年単位に区切って申告(12か月+残り期間) |
必要な申告回数 | 初年度に2回申告が必要(設立後12か月+残り2か月) |
実務的な注意点 | 会計監査・株主総会は定款ベース、税務申告は事業年度単位での分割が必要 |
法人税法第13条により、会計期間が1年を超える場合、その期間は1年ごとに区切って事業年度とみなされます。
したがって、税務申告は「1期目:12か月分」「2期目:残余の2か月分」で行う必要があります。
2期目終了後、次の事業年度は直後の1月1日から12月31日になります。
定款に特段の変更がない限り、以後は暦年ベースの事業年度が続く運用になります。