新公益法人制度改革を受けた新公益法人会計基準の変更点概要まとめ

目次

注)本記事の内容は、記事掲載日時点の情報に基づき判断しておりますが、一若輩者の執筆であることから個別の案件での具体的な処理については責任を負いかねます旨ご理解いただきたく存じます。制度上の取扱いに言及しておりますが、個人的な見解であり、より制度深化に資すればと考えてのものです。

Ⅰ.公益法人制度改革の前提・全体像

1.公益法人制度改革の経緯・目的

以前掲載した記事(【公益法人法改正】公益法人認定法などの改正案を閣議決定 令和7年4月の施行予定)🔗にありましたように、公益法人制度の改革が進められています。その制度改正の趣旨は、以下の通りです。日本には約9,700の公益法人があり、年間5兆円の公益目的事業費を扱っておりその規模からも健全な成長が望まれるのですが、現に行われている財務規律や手続について、その潜在的能力が発揮しにくいという批判や意見があり、見直されることとなりました。

改正の目的:
1. 財務規律を見直し、法人の機動的な経営を可能にする。
2. 透明性向上とガバナンス強化によって国民からの信頼を得る。
3. 行政手続を簡素化し、公益法人がより使いやすい制度へと進化する。

 

上記目的の達成をもって公益法人の使い勝手が増すことで民間公益の活性化が期待されています。

法律・政令・ガイドライン・会計基準・プラットフォームやシステムなどその改正事項が多岐にわたっているようです。 

2.主要出典

 

基本的には、下記の資料から要約・抜粋を行うことでより簡潔な理解の助けになればと思い記載いたします。

3.公益法人制度改革による主な改正点

  主な改正点としては、以下の様な項目があります。

① 財務規律の柔軟化・明確化

収支相償の原則が見直され、中期的な収支均衡を図る形へ移行。

② 行政手続の簡素化・合理化

収益事業の変更手続が、認定審査から届出制へ変更。

③ ガバナンス強化・透明性向上

公益法人の区分経理の義務化。理事・監事の特別利害関係の排除。外部理事・監事の導入。
ガバナンス向上に向けた自主的取組の記載が必須に。

④ 財務情報の開示

分かりやすい財務諸表の見直し。
貸借対照表(B/S)と活動計算書(P/L)の改訂:
「正味財産増減計算書」→「活動計算書」 へ名称変更。
指定正味財産の振替処理の廃止。
基本財産・特定資産の表示整理。

これら本改正により、公益法人は新基準への移行準備が必須となります。

特に、④に関連するのが新公益法人会計基準です。

4.公益法人制度改革の全体像の規制根拠とその内容

制度改革全体の中で、会計基準に関する点は上記表の赤枠で囲われている箇所です。

Ⅱ.新公益法人会計基準の改正について

1.公益法人会計基準改正の経緯とポイント

新しい「公益法人会計基準」及び「公益法人会計基準の運用指針」が令和6年12月20日に内閣府公益認定等委員会で決定されました。
本会計基準等は、今般の公益法人制度改革を受けた必要な見直しを行うとともに「わかりやすい財務情報の開示」を実現するため制定されたものです。

ポイントとしては以下の様なものがあります。

・新会計基準全体に関する基本的な考え方として、公益法人における「財務報告の目的」を明確化(公益法人に期待される財務情報の開示の考え方を明確化)
・公益法人の特性を踏まえつつ、多様なステークフォルダにとってわかりやすい財務情報の開示とするため、公益法人特有の会計処理を見直し(振替処理の廃止、基本財産・特定資産の位置付けの整理等)。併せて、「正味財産増減計算書」から「活動計算書」へ見直し
・財務規律の柔軟化・明確化に伴う法人の説明責任として、財務諸表における情報開示を充実(財務規律への適合状況について注記及び附属明細で一体的な情報開示)
・現行会計基準制定時(平成20年)からの公益法人の活動や社会変化への対応として、金融商品に関する会計処理や固定資産に関する会計処理などの明確化、寄付によって受け入れた資産に関する情報開示の追加

2.公益法人会計基準改正による主な具体的変更点

① 貸借対照表 (B/S)

基本財産・特定資産の分類がなくなり、流動/固定資産に統合。
その他有価証券評価差額金が純資産の部に計上。

② 活動計算書 (P/L)

名称変更: 「正味財産増減計算書」→「活動計算書」。
区分: 「経常活動区分」「その他活動区分」へ統一。
振替処理の廃止。
目的別(機能別)分類の導入 (例: 「公1事業費」「管理費」など)。

③ 収益認識基準

交換取引(売上など): 企業会計基準に準拠。
非交換取引(寄付・補助金): 新たに詳細規定を明確化。

④ 財務規律適合性の情報開示

財務諸表に公益認定基準に関する情報を含めることが義務化。

⑤ 小規模法人の負担軽減策

キャッシュフロー計算書の作成免除 (会計監査人非設置法人)。
簡便的な減損会計適用

3.表示様式-貸借対照表

まず、従前の会計基準で特徴的だったのが、基本財産、特定資産についての位置づけについてです。固定資産の部を、基本財産、特定資産、また、その他の固定資産ということで3区分が表示の区分になっていました。

新会計基準の貸借対照表は、純資産箇所は別として、いわゆる営利法人の貸借対照表のように「流動資産」「固定資産」などと表示するようになり個人的には馴染んでいる様式へ変更されたと感じます。従前の表示情報が失われるわけではなく、注記として表示する必要があるようです。

4.表示様式-活動計算書

新会計基準の活動計算書もいわゆる営利法人の損益計算書のように変更されたと思います。

5.適用開始時期

本会計基準の適用開始: 2025年(令和7年)4月1日以降からです。経過措置として 2028年(令和10年)3月31日まで現行基準の適用可となっています。

 

Ⅲ.私見

変更点が多岐に及んでいるので、網羅的な理解には時間がかかりそうです。

ただ、貸借対照表などの財務諸表が営利法人のものと近くなったのは実務の現場からも歓迎されると思います。公益とは言えそれに関わる理事をはじめとした公益法人の経営者や利害関係者は自身のキャリアにおいて民間営利企業のポストを兼ねているかその経験がある方が多いと思われ、公益独自の会計をゼロベースの表示規定から理解していくよりも、とっつきやすいと思われます。

そのほか、改正趣旨にもある、旧制度での機動的な運用を行いにくいという領域については、公益インフォーメーションシステムの使い勝手の悪さ等が多分に含まれていたと個人的に考えていますが、それが本改正に付随してどう変更されるかという情報は現時点で少ないと思います。事業報告とその審査業務においてより機動的に融通が利くシステムへと改修されればと祈念致します。

PR

news line 

その他の最新ニュースはこちら

最新ニュース

Looking For A stylish Partner?