【図解でまとめ】確定拠出年金制度における事業主と従業員の税務

目次

注)本記事の内容は、記事掲載日時点の情報に基づき判断しておりますが、一若輩者の執筆であることから個別の案件での具体的な処理については責任を負いかねます旨ご理解いただきたく存じます。制度上の取扱いに言及しておりますが、個人的な見解であり、より制度深化に資すればと考えてのものです。

1.確定拠出年金とは

最近はやりの確定拠出年金ですが、一見税金に関する領域が分かりにくく、ちょっと時間をかけて整理してみたので、わかりやすい図解を作れればと思い記事に致します。特に拠出時点で、従業員サイドの課税の取り扱いがどうなるかについて区分に応じた言及が少ないような気がしております。

①確定拠出

確定拠出年金は、拠出された掛金とその運用益との合計額をもとに、将来の給付額が決定する年金制度です。

掛金を事業主が拠出する企業型DC(企業型確定拠出年金,DC:Defined Contribution Plan)と、加入者自身が拠出するiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)があります。

参考:厚生労働省HP「確定拠出年金制度の概要」🔗R5.8.1訪問。

②確定給付

なお、対応する概念として確定給付企業年金(DB)があります。

事業主が従業員と給付の内容をあらかじめ約束し、高齢期において従業員がその内容に基づいた給付を受けることができる企業年金制度で、給付の内容があらかじめ定められることから、DB(Defined Benefit Plan)、「給付建て年金」とも呼ばれます。

前者は拠出が確定しているのに対して、後者は給付が確定しているというイメージです。

2.企業型DCと個人型DC(iDeCo)の違い

①企業型DC

企業型DCは事業主が主体となり実施される制度で、その事業主が使用する従業員が加入者となります。
掛金は事業主が拠出するほか、規約に定めることで事業主の掛金に上乗せして、加入者が一定の条件で掛金を拠出するしくみ(マッチング拠出)を設けることができます。

②IDECO

一方、iDeCoは国民年金基金連合会が実施する制度で、原則として20歳以上60歳未満の全ての方(企業型DCの加入者である場合は、加入している企業型DCの規約でiDeCoに加入できる旨が定められていることが必要)が加入できます。掛金は加入者自らが拠出します。

3.図解

 企業型DCiDeCo
拠出時
(事業主サイド)
非課税非課税
■事業主が拠出した掛金:全額損金算入■加入者が拠出した掛金:全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)
■加入者が拠出した掛金:全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)■iDeCo+を利用し事業主が拠出した掛金:全額損金算入🔗
運用時■運用益:運用中は非課税
■積立金:特別法人税課税(現在、課税は停止されています。)
給付時■年金として受給:公的年金等控除
■一時金として受給:退職所得控除

表出典:厚生労働省HP「確定拠出年金制度の概要」🔗筆者一部加筆。

一般的な企業型DCは以下のように設計されます。

まず現行給与を一部減額し、減額分と同額の「生涯設計手当」を新設します。(※不利益変更とならないよう、実質の支給金額は変えません。)

次に「生涯設計手当」は、その一部または全部を確定拠出年金の掛金として拠出するのか、給与として受け取るのかを従業員が選択します。

確定拠出年金の掛金を選択した場合、税金(所得税・住民税)や社会保険料の算定基礎から外れます。(給与を選択した場合は外れません。)

上記のような設計の際に、生涯設計手当の内容を従業員が選択するフェーズと、確定拠出掛金を事業主と従業員どちらが拠出するかを事業主が選択するフェーズがあり、一見とっつきにくいです。

確定拠出掛金は、事業主・従業員いずれの拠出であっても法人税法上は支払者にとっての経費となり、従業員においては所得税が非課税※1となるか給与所得となったうえで給与所得控除※2できるので、課税対象にはなりません。

※1 所得税法施行令64条

所得税法施行令 第64条 確定給付企業年金規約等に基づく掛金等の取扱い
事業を営む個人又は法人が支出した次の各号に掲げる掛金、保険料、事業主掛金又は信託金等は、当該各号に規定する被共済者、加入者、受益者等、企業型年金加入者、個人型年金加入者又は信託の受益者等に対する給与所得に係る収入金額に含まれないものとする。

※2 所得税法第75条  小規模企業共済等掛金控除

居住者が、各年において、小規模企業共済等掛金を支払つた場合には、その支払つた金額を、その者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から控除する。
2 前項に規定する小規模企業共済等掛金とは、次に掲げる掛金をいう。
一 小規模企業共済法(昭和40年法律第102号)第2条第2項(定義)に規定する共済契約(政令で定めるものを除く。)に基づく掛金
(施行令208の2)
二 確定拠出年金法(平成13年法律第88号)第3条第3項第7号の2(規約の承認)に規定する企業型年金加入者掛金又は同法第55条第2項第4号(規約の承認)に規定する個人型年金加入者掛金
三 第9条第1項第3号ハ(年金等の非課税)に規定する政令で定める共済制度に係る契約に基づく掛金
(施行令20②)
3 第1項の規定による控除は、小規模企業共済等掛金控除という

上述のように、企業型確定拠出年金には積み立てる掛金が「非課税」というメリットがあります。ただし、その一方で、個人サイドでは資産運用のリスクを負ったり、60歳まで引き出すことができないというデメリットがあります。また、事業主サイドでは、制度運営費の負担や事務負担が生じるといったデメリットがあります。

関連当事者の税負担を含めた総合的な検討によって制度導入の判断が望まれます。

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