税理士から見た福岡の不動産価格と公示価格・路線価の上昇の課題

空から見た中洲

目次

注)本記事の内容は、記事掲載日時点の情報に基づき判断しておりますが、一若輩者の執筆であることから個別の案件での具体的な処理については責任を負いかねます旨ご理解いただきたく存じます。制度上の取扱いに言及しておりますが、個人的な見解であり、より制度深化に資すればと考えてのものです。

1.はじめに

福岡県内の地価が上昇しています。継続して地価が上昇している背景としては、再開発が行われているためだと言われています。

現在、福岡市では行政主導で「天神ビッグバン」と「博多コネクティッド」と呼ばれる2つの再開発が行われています。

行政の活力ある取り組みで活況を呈す福岡に身を置く立場として、まずは誇らしく、喜ばしいと思うところです。

大歓迎を前提としたうえで、いくばくかの思うところありましたので若干の懸念を記載してみようと思います。

2.天神ビッグバンとは

福岡市の中心部は元来、警固断層や空港が都心に近いなどの課題がありましたが、

更新期を迎えたビルが耐震性の高い先進的なビルに建て替えることなどにより、

多くの市民や、働く人・訪れる人の安全・安心につなげ、もって都心部の機能を高め、新たな空間や雇用、税収を生み出すプロジェクトだといわれています。

(参考:福岡市HP🔗)

バリカタキッズが歌う「天神でビッグバン!」はこちら🔗

3.博多コネクテッドとは

博多コネクテッドとは、博多駅周辺の2011年の九州新幹線開業に伴う地下鉄七隈線延伸やはかた駅前通り再整備など、

交通基盤の拡充とあわせ、容積率などの規制緩和により、耐震性の高い先進的なビルへの建替えや歩行者ネットワークを拡大するとともに、

ハード・ソフト両面から歴史ある博多旧市街との回遊性を高めることで、都市機能の向上を図っていく取り組みを差します。

(参考:福岡市HP🔗)

このような行政主導を背景として、これまでにない人口増加とインバウンド需要が喚起され、国内や世界の投資家、投資ファンドまでもが福岡に注目しているといわれています。 

4.具体的な福岡県の地価上昇について

福岡県の公示地価・基準地価は、2013年以降、上昇し続けており、特に福岡市都心部である天神や博多エリアの上昇率が牽引している傾向にあります。

令和5年1月時点の「地価公示」が発表され、福岡県の上昇率は商業地でプラス5.3%と、3年連続で全国1位となりました。

福岡県地価の特徴的な動きとしては、以下のようです。

(1) 県全体の地価の対前年平均変動率は、全用途で9年連続の上昇。
 全用途(R4)3.5%→(R5)4.6%
(2) 用途別では、住宅地の対前年平均変動率は9年連続の上昇、商業地の対前年平均変動 率は8年連続の上昇。
 住宅地(R4)3.2%→(R5)4.2%
 商業地(R4)4.1%→(R5)5.3%

単位:%

 R4年R5年
全用途3.54.6
住宅地3.24.2
商業地4.15.3

変動率は、上記のようなものであるため、例えば5年前の地価から比べると現在の地価は大きく上昇しています。

5.具体的な福岡市の地価・路線価上昇について

福岡市及びその近郊において、全ての用途で引き続き上昇しています。


・福岡市博多区・中央区・早良区において、住宅地の上昇率が大きく拡大。 (博多区:(R4)10.8%→(R5)12.9%、中央区:(R4)7.4%→(R5)10.4%、 早良区:(R4)5.5%→(R5)7.6%)


単位:%

 R4年R5年
博多区20.812.9
中央区7.419.4
早良区5.57.6

福岡市の地価公示における住宅地平均価格推移

福岡市の地価公示における商業地平均価格推移

例えば、福岡市南区に所在する当事務所近隣の主要道路に面する土地の路線価は、
H29年に190,000円/㎡であったものが、R5年に330,000円/㎡となるなど約6年ほどの間に1.74倍となっています。

6.課題:地価と相続税との関係

(1)公示価格と路線価の関係
   一般的に路線価は相続税路線価を差し、公示価格に対し80%程度の価格水準に設定されているといわれます。
(2)路線価と相続税の関係
   土地に対する相続税は、一般的に路線価を用いて計算される相続税評価額に対してかかります。
(3)公示価格と相続税の関係
   そのため、公示地価の上昇によって路線価が上昇し、相続税評価額が上昇するとともに相続税も大きくなります。

地価上昇に伴う相続税増加に関する問題点は、かつてのバブル期においては議論されてきたと思われますが、
近年は、地価変動が緩やかであったこと、また長く苦しい不況からようやく差し込んだ光ということもあり、かつてほどの議論は少ないように思います(バブル期に業界に身をおいていたわけではありませんが)。

さて、相続税を対策する上で一般的によく言われる対応策があります。

暦年贈与相続時精算課税・生命保険や退職金の活用などが挙げられますが、地価が極端に上昇すると対応に苦しむケースがあります。

すなわち、計画的な対応が追い付かない場合です。

その反論として、地価上昇に伴い財産自体の価値が増加しているため、問題ないという意見があります。

もちろん自身の保有する財産価値が上がるのは喜ばしいことです。

相続税には元来、富の再分配を通すことで貧富の差をなくし、不労所得に対する不公平感を解消するなどの役割があり、社会的な意義をもつ税金です。

しかしながら、所有権自体に価値を置き、財産価値に対する意識が少ない人が一定数いる事実も忘れてはなりません。

すなわち、先祖代々保有する土地を、自身の世代以後も継続して保有し続けることが最大の目的である納税者にとっては、

納税資金の問題で資産を手放すことは、大変に頭を悩ます問題です。

極端な地価の変化に対して、課税標準を弾力的に取り扱うような制度ができないものかと考えます。

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