法人税税法

株式(追加型証券)投資信託の解約に係る所得税額控除における所有期間計算について

1.前提

注)本記事の内容は、記事掲載日時点の情報に基づき判断しておりますが、一若輩者の執筆であることから個別の案件での具体的な処理については責任を負いかねます旨ご理解いただきたく存じます。

2.所得税額控除の制度概要及び趣旨

昨今、銀行をはじめとした金融機関において、資金調達サービス(資金の貸し出し)の抱合せとして投資信託商品がが販売されることがよくあります。その際には、法人が契約者となり同一の銘柄を毎月積み立てていくといった形態のものがあり、個人的には頻繁に見かける取引であると思います。

そのように、広く普及している取引でありながら
証券投資については、専門的な用語や考え方、その他金融商品に係る会計や税務の論点が関係しているため、 その処理については、頭を悩ませることが少なくありません。
実際に出会う事例につき、真実の処理に辿り付くために、関係各所へ問い合わせることがありますが、その内容につき正確に理解している人物に出会う方がむしろ稀であると感じます。

さて制度上、 仮にその商品を解約請求した場合、解約価額と元本相当額の 差額が受取配当金として税務上認識され、それに対しては源泉徴収が行われます。

そのようにして源泉徴収された所得税は、以下のような趣旨から、法人税額の算定上税額控除ができるような制度がとられております。

すなわち、元来、法人税法における所得税額控除の趣旨は、
法人が受ける利子、配当などに対しては、所得税法の規定(所法174)により所得税が源泉徴収され、
さらに、この利子、配当などは法人の所得金額を構成し、法人税が課されることとなるため、同じ所得に対して、所得税と法人税が二重に課税されることを防止しようというものです。

また、株式配当等について課された所得税については、配当等の元本を所有していた期間に対応する部分についてのみ控除を認める所有期間按分方式がとられています。
これは、配当等のように通常その元本が異動するものについて課された全額を控除することとすると、税制上の抜け穴として利用されるおそれがあるためです(『コンメンタール法人税4-2巻P4219』)。

3.問題意識

ここで、その所有期間按分方式について、特に上述の事例については
取得が、毎月行われている点解約請求である点が制度上の本来的な趣旨とどのように噛み合うかが問題となります。
買い足しが可能である「追加型」証券投資信託を前提に
当該解約差額に係る源泉所得税が法人税額の算定上、どのように税額控除されるかについては以下の規定があります。

【法人税基本通達6-2-8の規定及び解説 】

法人税基本通達 16-2-8 証券投資信託の収益の計算期間
証券投資信託(日々決算を行い、その都度その決算収益の全額を未払収益分配金勘定に振り替えることとされているものを除く。)の収益の分配に対する所得税額につき令第140条の2第2項又は第3項《法人税額から控除する所得税額の計算》の規定を適用する場合におけるこれらの項の配当等の計算の基礎となった期間は、次の期間をいう。この場合、(4)の追加型証券投資信託と他の証券投資信託とは区分して同条第3項の規定を適用することができるものとする。
(1) 信託期間中における決算分配金の分配については、その計算期間。
(2) 信託の一部の解約による収益の分配については、当該信託の開始の日からその解約の日までの期間。ただし、信託約款により、各計算期間ごとのいわゆる収益分配可能額(収益調整金の原資に相当する部分を除く。)の全額をそれぞれ各計算期間に係る決算分配金として分配することを定めている証券投資信託(以下16-2-8において「収益分配可能額全額分配の証券投資信託等」という。)の第2計算期間以後の解約による収益の分配については、直前の決算分配金に係る計算期間の末日の翌日から当該解約の日までの期間。
(3) 信託の終了による収益の分配については、当該信託の開始の日から終了の日までの期間。ただし、収益分配可能額全額分配の証券投資信託等の終了による収益の分配については、直前の決算分配金に係る計算期間の末日の翌日から当該終了の日までの期間。
(4) 追加型証券投資信託の収益の分配については、(1)から(3)までにかかわらず、
(1)の分配は、当該信託の当該受益権に係る設定日(追加設定の日を含む。以下16-2-8において「元本の設定日」という。)からその決算分配金に係る計算期間の末日までの期間(元本の設定日が当該決算分配金の計算期間の開始の日前である場合には、当該計算期間)、
(2)の分配は、元本の設定日から信託の解約の日までの期間、
(3)の分配は、元本の設定日から信託の終了の日までの期間。
(注) 日々決算を行い、その都度その決算収益の全額を未払収益分配金勘定に振り替えることとされている証券投資信託の収益の分配金について課された所得税の額は、常にその全額が同条第1項第1号に掲げる「その元本を所有していた期間に対応するものとして計算される所得税の額」に該当する。
※下線、筆者追加

そして、同通達逐条解説において、次のように解説されています。
追加型株式投資信託の収益の分配については、平成12年4月1日より、「個別元本方式」によって計算を行っている旨、
個別元本方式では、取得時までの運用益を含んだその時点の販売基準価額をそれぞれの受益者の個別元本として管理し、
各期の分配金のうち所得税の課税対象となる普通分配金部分は、個々の受益者ごと、かつ、元本の設定単位ごとに計算した個別元本を上回る金額とされている旨
そして、それが別の表現として、分配金のうち投資信託の取得時より前の収益部分の金額はすべて元本の返済に充てられ、
取得日以降の収益相当額が所得税の課税対象とされている(信託の解約や終了による収益分配についても同様)旨
したがって、追加型株式投資信託の収益に対する所得税の課税計算を個別元本方式により行う場合、
所得税額控除の計算の基礎となる収益の計算期間と保有期間は一致するものと考えられるとあります。

ここで個別元本とは、その設定時に実際に信託された金額のことを意味し、証券会社等の説明によると
同一の者が、同一ファンドを複数回取得した場合 には、その都度、個別元本が修正(移動平均による再計算)され、
追加購入(分配金再投資に よる購入分含む)の都度、移動平均することにより個別元本の額が再計算されるとあります。
この規定・解説を読解する限りは、毎月積立型であっても、
個別元本方式においては、
追加元本の設定ごとで判断すれば、
毎月の設定時の個別元本が異なるために、毎月の積立額それぞれに計算期間を設け計算を行うことができると解釈しております。
すなわち、解約時の源泉税がすべて控除可能との今のところの解釈です。
このことの証左として、国税庁の公表する法人税申告書における別表6-1「所得税額の控除及びみなし配当の一部の控除に関する明細書」記載事例には、利子配当の計算期間の箇所に以下のように記載されています。


利子配当等の計算基礎期間9」及び「(9)のうち元本所有期間10」
 月数は、暦に従って計算し、1月未満の端数は切り上げます。
 なお、設定により取得した国内追加型投資信託については、この欄の記載を省略し、「所有期間割合」欄に、「1.000」と記載して控除を受ける所得税額を計算してください。

4.暫定的な結論・私見

あくまで暫定的・個人的な判断としては、国内追加型投資信託については、法基通16-2-8(4)を根拠に、別表6-1記載例が計算期間の省略を説明していることから
結果として期間計算は不要となっているように思います。

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