節税保険商品販売等に係る業務改善命令と保険本来の趣旨について

法人保険イメージ

目次

1.情勢

金融庁は令和4年7月14日に外資系保険大手の保険会社に対し、保険業法に基づく業務改善命令を発出しました。報道によると同社は、過度に節税効果をうたった法人向けの保険商品(節税保険)を販売しており、金融庁は保険の趣旨を逸脱するような「極めて不適切な実態が認められた」と指摘し、経営責任の明確化などを同社に求めたということです(参考:読売新聞記事🔗,朝日新聞記事🔗)。

金融庁HPによると、令和元年2月の国税庁による法人税基本通達の改正に係る保険業界への周知以降、累次にわたり保険本来の趣旨を逸脱するような募集活動を行わないよう注意喚起を行っているほか、同年10月には、「保険会社向けの総合的な監督指針」の一部を改正し、法人等向け保険商品の設計上の留意点として、「保険本来の趣旨を逸脱するような募集活動につながる商品内容となっていないか」という観点を明確化し、節税(課税の繰り延べ)を訴求した商品開発を含め、同活動を防止するための指針を示している中で、「保険本来の趣旨を逸脱するような募集活動」の根絶に向けた再発防止策に取り組んでいる中であるにもかかわらず、当社の職員が法人税基本通達改正及び所得税基本通達改正の抜け穴を突いて、不適切な募集と認識しながら、年金保険を使った名義変更プランを考案・推進するといった悪質性が極めて高い事例が認められたとのことです(金融庁HP:マニュライフ生命保険株式会社に対する行政処分について🔗)。

これと同時に、金融庁は「節税(租税回避)を主たる目的として販売される保険商品への対応における国税庁との更なる連携強化について」を公表しました(参考:金融庁ホームページ「節税(租税回避)を主たる目的として販売される保険商品への対応における国税庁との更なる連携強化について🔗」)。
これによれば、

「節税(租税回避)を主たる目的として販売される保険商品」について、2019年の国税庁による法人税基本通達改正の周知、いわゆるバレンタインショック以降、当庁からも累次にわたり注意喚起を行い、監督指針の改正等を実施してきたところであるが、依然として、保険本来の趣旨を逸脱するような商品開発や募集活動が確認されており、保険契約者保護の観点で問題が生じている

ことから、今後

当庁においては、今後発生しうる保険本来の趣旨を逸脱するような商品開発や募集活動への対応として、国税庁との連携を更に強化し、商品審査段階及びモニタリング段階での取組を通じて、より一層の保険契約者保護を図ることとする。

としており、保険の新商品の審査の段階で、保険会社に対して国税庁に事前照会を慫慂するとともに、必要に応じて金融庁が国税庁に事前照会を行い、その結果に基づいて行政指導をする連携が図られるということです。

2.私見

当該、行政処分とそれに関わる一連の金融庁からの公表の動きは租税回避行為に対する行政の姿勢の表れであると思われます。

以前の以下の記事でも言及しましたが、

平成31年に通達改正があったにも関わらず、その抜け穴を狙う商品開発が行われていることについて、歴史的に繰り返される節税と租税回避のいたちごっこが終わらないという感想を持ちました。保険会社は、保険の本質的な機能であるリスクマネジメントの観点から、より消費者の利便に資する保障の開発に目が向けばと祈念致します。保険本来の趣旨は、相互扶助や不意の事故や資金負担に備えるための目的があるはずです。

また、今回の金融庁と国税庁の連携強化や保険商品開発段階でのモニタリングについては、いたちごっこに終止符が打たれるのではと少なからず期待を寄せています。

 

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