目次
注)本記事の内容は、記事掲載日時点の情報に基づき判断しておりますが、一若輩者の執筆であることから個別の案件での具体的な処理については責任を負いかねます旨ご理解いただきたく存じます。制度上の取扱いに言及しておりますが、個人的な見解であり、より制度深化に資すればと考えてのものです。
Ⅰ.特定株式投資信託の意義・定義
特定株式投資信託とは、
信託財産が株式のみの証券投資信託のうち、株価指数連動型などの一定の上場投資信託(ETF)などの上場しているものをいいます。
所得税における配当控除や法人税における受取配当の益金不算入に関して、特定株式投資信託とは何かというのが処理を決定する上で問題となります。
実務上、その定義を辿るのですが、税目を横断していて分かりにくく言及している文献が少ないと思いましたので
税務的な観点から出発し、その意義と条文の構成及び実際の投資信託商品との関連について整理してみようと思います。
Ⅱ.特定株式投資信託の意義に関する税法上の条文構成
Ⅱ-1.租税特別措置法
第3条の2 利子所得等に係る支払調書の特例
居住者若しくは恒久的施設を有する非居住者又は内国法人若しくは恒久的施設を有する外国法人に対し国内において平成28年1月1日以後に支払うべき所得税法第23条第1項に規定する利子等(不適用利子を除く。)又は投資信託(公社債投資信託、特定株式投資信託(信託財産を株式のみに対する投資として運用することを目的とする証券投資信託のうち、その受益権が金融商品取引法第2条第16項に規定する金融証券取引所に上場されていることその他の政令で定める要件に該当するものをいう。以下この節において同じ。)及び公募公社債等運用投資信託を除く。)若しくは特定受益証券発行信託の収益の分配に係る所得税法第24条第1項に規定する配当等(同項に規定する剰余金の配当(以下この節において「剰余金の配当」という。)を除く。)の支払をする者は、財務省令で定めるところにより、当該利子等又は配当等の支払に関する同法第225条第1項の調書を同一の居住者若しくは恒久的施設を有する非居住者又は内国法人若しくは恒久的施設を有する外国法人に対する1回の支払ごとに作成する場合には、同項の規定にかかわらず、当該調書をその支払の確定した日(無記名の公社債の利子又は無記名の貸付信託、投資信託(特定株式投資信託を除く。)若しくは特定受益証券発行信託の受益証券の収益の分配に関するものについては、その支払をした日)の属する月の翌月末日までに税務署長に提出しなければならない。
Ⅱ-2.租税特別措置法施行令
第2条 特定株式投資信託の要件
法第3条の2に規定する政令で定める要件は、当該証券投資信託の受益権が金融商品取引所(金融商品取引法第2条第16項に規定する金融商品取引所をいう。以下この条において同じ。)に上場されていること及び投資信託及び投資法人に関する法律第4条第1項に規定する委託者指図型投資信託約款(当該証券投資信託が外国投資信託(同法第2条第24項に規定する外国投資信託をいう。以下この条において同じ。)である場合には、当該委託者指図型投資信託約款に類する書類及び当該金融商品取引所の上場に関する規則)に次の定めがあることその他財務省令で定める要件とする。
(規2の3)
一 信託契約期間を定めないこと(当該証券投資信託が外国投資信託である場合には、信託契約期間を定めないこと又は当該証券投資信託の設定がされた国の法令の定めるところにより信託契約期間(財務省令で定める期間に限る。)が定められていること。)。 |
二 当該証券投資信託の受益権が金融商品取引所に上場することとされていること(当該証券投資信託が外国投資信託である場合には、その受益権が金融商品取引法第2条第8項第3号ロに規定する外国金融商品市場に上場することとされていること。)。 |
三 受益者は、その有する受益権(当該証券投資信託の受託者が投資信託及び投資法人に関する法律第17条第1項第2号に規定する重大な約款の変更等に反対した受益者からの同法第18条第1項の規定による請求により買い取つた受益権を除く。)について、その信託契約期間中に当該信託契約の一部解約を請求することができないこと。 |
四 信託財産は特定の株価指数(金融商品取引法第2条第17項に規定する取引所金融商品市場又は同条第8項第3号ロに規定する外国金融商品市場に上場されている株式について多数の銘柄の価格の水準を総合的に表した指数をいう。)に採用されている銘柄の株式に投資を行い、その信託財産の受益権一口当たりの純資産額の変動率を当該特定の株価指数の変動率に一致させることを目的とした運用を行うこと。 |
五 当該証券投資信託の設定又は追加設定に係る信託又は追加信託についての当初の受益者については、その者の氏名又は名称、住所及び個人番号(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成25年法律第27号)第2条第5項に規定する個人番号をいう。以下この章において同じ。)又は法人番号(同条第16項に規定する法人番号をいう。以下この章において同じ。)(個人番号又は法人番号を有しない者にあつては、氏名又は名称及び住所)の受託者(当該証券投資信託が外国投資信託である場合には、その受益権を上場することとされている金融商品取引所から当該受益権の売買の決済に関する事務の委託を受けた法人。第7号において同じ。)への登録を行つた上で、受益権の振替又は交付を行うこと。 |
六 収益の分配は、信託の計算期間(当該証券投資信託が外国投資信託である場合には、収益の分配に係る計算期間)ごとに、信託財産について生ずる配当、受取利息その他これらに類する収益の額の合計額から支払利子、信託報酬その他これらに類する費用の額の合計額を控除した額の全額についてすることとされていること。 |
七 収益の分配の支払は、当該収益の分配に係る計算期間の終了する日において受益者としてその氏名又は名称、住所及び個人番号又は法人番号(個人番号若しくは法人番号を有しない者又は当該収益の分配につき法第9条の3の2第1項に規定する支払の取扱者を通じて交付を受ける者にあつては、氏名又は名称及び住所)が受託者に登録されている者に対して行われること。 |
八 受益者は、その者の有する一定口数以上の受益権をもつて、当該受益権と当該受益権の信託財産に対する持分に相当する株式との交換(当該信託財産に属する株式のうちに、その株式の発行法人から支払がされる所得税法第24条第1項に規定する配当等を受ける権利その他の株主の権利に係る基準日がその交換の日であるもの(以下この号において「権利落ち株式」という。)がある場合には、当該権利落ち株式の価額に相当する金銭の交付を含む。次号において同じ。)を請求することができること。 |
九 前号の交換の請求があつた場合には、当該証券投資信託の委託者は、その受託者に対し、当該受益権と信託財産に属する株式のうち当該受益権の信託財産に対する持分に相当するものとの交換をするよう指図すること(当該証券投資信託が外国投資信託であるときは、当該外国投資信託の受託者は、当該受益権と信託財産に属する株式のうち当該受益権の信託財産に対する持分に相当するものとの交換をすること。)。 |
Ⅱ-3.租税特別措置法施行規則
第2条の3 特定株式投資信託の要件
施行令第2条に規定する財務省令で定める要件は、次に掲げる要件とする。
一 当該証券投資信託の施行令第2条に規定する委託者指図型投資信託約款に、当該証券投資信託の受益権の口数が同条第9号の交換を行うことにより一定の口数を下ることとなつた場合には、委託者は当該証券投資信託を終了させることができる旨(当該証券投資信託が同条に規定する外国投資信託である場合には、当該外国投資信託の信託財産の純資産額が同号の交換を行うことにより一定の金額を下ることとなつたときは、委託者は当該外国投資信託を終了させることができる旨)の定めがあること。
二 当該証券投資信託が投資信託及び投資法人に関する法律施行令(平成12年政令第480号)第12条第1号又は第2号(金銭信託以外の委託者指図型投資信託の禁止の適用除外)に掲げるものであること。
2 施行令第2条第1号に規定する財務省令で定める期間は、当該証券投資信託に係る契約において定める信託期間が、その信託の設定の日から100年を経過した日以後の日で当該契約において定めた日若しくは当該契約で指定された者のうち最後の生存者の死亡の日から20年を経過した日以後の日で当該契約において定めた日のいずれか早い日とされている場合の当該信託期間又は当該信託期間と同程度の期間が定められている場合の信託期間とする。
Ⅲ.受取配当等の益金不算入に関連した特定株式投資信託の条文構成
平成27年度の税制改正において、受取配当等の益金不算入制度の見直しが行われ、公社債投資信託以外の証券投資信託の収益の分配の額のうち配当等の額とされる部分の金額については、受取配当等の益金不算入制度の対象となる配当等の額から除外されました(旧法23①三)。
ただし、特定株式投資信託(外国株価指数連動型特定株式投資信託を除く。)の収益の分配の額については、引き続き受取配当等の益金不算入制度の対象とされ、非支配目的株式等(改正前:完全子法人株式等及び関係法人株式等のいずれにも該当しない株式等)の配当等の額として、その収益の分配の額の20%(改正前:50%)を益金の額に算入しないこととされています(措法67の6①、法23①⑦)。
上述の特定株式投資信託の意義が法人税法の受取配当等の益金不算入の論点にいう特定株式投資信託に該当する規定となっているのが以下の条文です。
受取配当等の益金不算入の規定
法人税法
第23条 受取配当等の益金不算入
内国法人が次に掲げる金額(第1号に掲げる金額にあつては、外国法人若しくは公益法人等又は人格のない社団等から受けるもの及び適格現物分配に係るものを除く。以下この条において「配当等の額」という。)を受けるときは、その配当等の額(関連法人株式等に係る配当等の額にあつては当該配当等の額から当該配当等の額に係る利子の額に相当するものとして政令で定めるところにより計算した金額を控除した金額とし、完全子法人株式等、関連法人株式等及び非支配目的株式等のいずれにも該当しない株式等(株式又は出資をいう。以下この条において同じ。)に係る配当等の額ににあつては当該配当等の額の100分の50に相当する金額とし、非支配目的株式等に係る配当等の額にあつては当該配当等の額の100分の20に相当する金額とする。))は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しない。
一 剰余金の配当(株式等に係るものに限るものとし、資本剰余金の額の減少に伴うもの並びに分割型分割によるもの及び株式分配を除く。)若しくは利益の配当(分割型分割によるもの及び株式分配を除く。)又は剰余金の分配(出資に係るものに限る。)の額 |
二 投資信託及び投資法人に関する法律第137条(金銭の分配)の金銭の分配(出資総額等の減少に伴う金銭の分配として財務省令で定めるもの(第24条第1項第4号(配当等の額とみなす金額)において「出資等減少分配」という。)を除く。)の額 |
三 資産の流動化に関する法律第115条第1項(中間配当)に規定する金銭の分配の額 |
租税特別措置法
第67条の6 特定株式投資信託の収益の分配に係る受取配当等の益金不算入の特例
法人が支払を受ける第3条の2に規定する特定株式投資信託(第9条第1項第3号に規定する外国株価指数連動型特定株式投資信託を除く。)の収益の分配の額がある場合には、法人税法第23条の規定の適用については、同条第1項第1号中「又は剰余金の分配」とあるのは「、剰余金の分配」と、「)の額」とあるのは「)
又は租税特別措置法第67条の6第1項(特定株式投資信託の収益の分配に係る受取配当等の益金不算入の特例)に規定する特定株式投資信託(以下この条において「特定株式投資信託」という。)の収益の分配の額」と、同条第2項中「株式等をその」とあるのは「株式等(特定株式投資信託の受益権を含む。以下この項において同じ。)をその」と、「日をいう」とあるのは「日をいい、特定株式投資信託の収益の分配にあつてはその計算の基礎となつた期間の末日とする」と、同条第6項中「をいう」とあるのは「及び特定株式投資信託の受益権をいう」とする。
〔通達67の6-1〕
2 前項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。
よって、法人税法上の受取配当等の益金不算入の規定における特定株式投資信託の定義は、措置法3条の2に規定する意義であると思われます。
すなわち、平成27年の改正以後も引き続き受取配当等の益金不算入制度の対象とされているのは信託財産が株式のみの証券投資信託のうち、株価指数連動型などの一定の上場投資信託(ETF)などの上場しているものと捉えて良いと考えられます。
Ⅳ.ETF・上場投資信託について
ETFは、「Exchange Traded Fund」の略で、日本語では「上場投資信託」と呼ばれます。投資信託の一種で、証券取引所に上場されているため、株式と同様にリアルタイムで取引できるのが特徴です。特定株価指数などに連動するインデックス型と、連動対象指数がないアクティブ型があります。(日興アセットマネジメントETF(上場投資信託)の仕組み🔗)
受益証券発行信託の種類

ETFも投資信託もどちらも投資信託ですが、大きく異なる特徴は上場しているか上場していないか(証券取引所を通じて取引するのかしないのか)の違いです。
そのほか、商品種別は投資信託の方がETFよりも多いのが特徴です。
なお、日本証券取引所のHPでは、ETFのカテゴリー別の銘柄一覧を検索できるようになっています。