卸売業者におけるインボイス対応勉強会・セミナーの実施

目次

1.卸売業者へ勉強会目的の訪問

注)本記事の内容は、記事掲載日時点の情報に基づき判断しておりますが、一若輩者の執筆であることから個別の案件での具体的な処理については責任を負いかねます旨ご理解いただきたく存じます。制度上の取扱いに言及しておりますが、個人的な見解であり、より制度深化に資すればと考えてのものです。

さて、先日立派な本社屋が竣工した会社へ、インボイス対応の勉強会を開催のため赴きました。件の会社は、製造小売や卸売業に近い業態です。参加者は、会社経理3名、システム担当2名、購買担当3名、当事務所から私含めて2名の参加です。

2.概要

消費税概要、多段階課税

普段、消費税実務に直接触れない方々も参加されていたので、消費税制度そもそもの概要からお話しをしました。ちょっと脱線しますが(本質的なところでは今回のインボイス制度導入と関連があると思われます)、わが国消費税は、「消費」税という消費を名にし負いながら、付加価値税であるという説明がなされてきました。この付加価値税と本国制度の消費税納税の仕組みにおける多段階課税の考え方をよく理解することがインボイス制度理解には不可欠であると考えます。

多段階課税
財務省HPより画像借用

脱線が続きますが、これに関連して我が国の消費税が「消費」に課税をする税であるのか、あるいは、「付加価値」に課税をする税であるのかという命題に対してアミダスパートナーズ コラム 2020/05/15掲載🔗において日本税制研究所代表理事・税理士の朝長英樹先生🔗は以下の様に開陳されています。

税額計算の仕組みに関しては、消費者が負担する消費税を事業者の段階で分けて課税をするもの(いわゆる「多段階課税」)という説明がなされています。

 仮に、我が国の消費税が「付加価値税」であったとしたら、税額計算の仕組みがどうなるのかというと、「売上げ」と「仕入れ」の差額は「付加価値」と捉えることができますから、やはり、税額計算の仕組みは、上記の計算例に示されているものと同じものとなるはずです。

 このため、税額計算の仕組みから判断すると、我が国の消費税は「付加価値税」であるということもできるわけです。

 しかし、消費者の「消費」に税の負担を求めるということであれば、本来は、上記のように多くの事業者に申告納税を行ってもらわなければならなくなる多段階課税ではなく、消費者と取引をする事業者だけに申告納税を行ってもらう単段階課税とするのが最も理論的で簡素かつ問題も生じない仕組みであるということになるはずです。そして、常識的に考えると、消費者に負担を求める税について、消費者とは取引をしない事業者にまで申告納税の義務を負わせるということには、問題がある、ということともなるはずです。

 それにもかかわらず、何故、多段階課税の仕組みを採ることとされたのでしょうか。

 私は、消費者だけではなく事業者にも税を負担させる仕組みとしようとしたことがその理由の一つとなっていると考えています。(中略)我が国の消費税は、仕入税額控除を制限することで事業者にも負担をさせることができる仕組みとなっている、ということです。仕入税額控除に関しては、「生産、流通の各段階で二重、三重に税が課されることのないよう、売上げに係る消費税額から仕入れに係る消費税額を控除し、税が累積しないような仕組みが採られている。」(同前3頁)と説明されており、確かに、そのような累積排除の仕組みとはなっているわけですが、仕入税額控除が税の累積排除という役割を果たすのは、事業者が自ら支払った消費税を全て控除できる場合だけであって、一部でも控除できない額があれば、その額だけ税の累積が起こってしまうこととなります。これは、仕入税額控除が事業者に累積的に税を負担させることができる仕組みでもある、ということを意味しています。

制度立法当初は、累積排除の手続に関し、事務負担の増大を招く面が危惧された点があるものの,産業経済に対する中立性,国境税調整の的確さ等の長所を評価する意見が多くみられたと言われていますが、朝長先生のご意見に大変感銘を受けるとともに、溜飲を下げるのであります。なお、その他、インボイス導入にあたって消費税の課題や本質的な見直しについて言及されている文献に『消費税の現状と課題── 消費税法の性質からの検討 ──』金子友裕(東洋大学経営学部准教授)🔗があります。金子先生🔗も税法研究の重鎮と理解しております。

制度是非をはじめとした個人的見解はさておき、消費税の概略を参加者メンバーにお話しした次第です。すなわち、インボイスは当該多段階課税制度における「仕入サイド」の消費税を算定する上での要件を求める制度なのです。従前は、帳簿方式であったのが、より厳格な証明力を具備したインボイスが必要となる点、変更点の肝であると考えます。

3.特に実務上の課題となりそうな項目

話の中で、特に実務上の問題となりそうな論点が以下に係る論点でした。

「適格返還請求書」の記載事項の要件に「対価の返還等の基となった取引を行った年月日」というのがあります。

  • 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
  •  売上げに係る対価の返還等を行う年月日及びその売上げに係る対価の返還等の基となった課税資産の譲渡等を行った年月日(適格請求書を交付した売上げに係るものについては、課税期間の範囲で一定の期間の記載で差し支えありません。)
  •  売上げに係る対価の返還等の基となる課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(売上げに係る対価の返還等の基となる課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等である旨)
  •  売上げに係る対価の返還等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額
  •  売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額等又は適用税率

換言すれば、返品の場合には、返還インボイスを発行し、そこに返品の基となった売上が計上された日付を記載します。月単位や「○月~△月分」といった記載も認められます。

この点、日々膨大な数の取引を行う小売業や卸売業において、いつ売り上げたものに係る返品かの管理が実務上できないということでした。なるほど、事業者さんと対話しないとわからないこともあると反省した次第であります。

インボイス導入における事業者の事務負担増については、制度解釈上の混乱とともに税理士会でも指摘され、是正の建議・要望🔗がなされているところです。上記の返還インボイスの作成実務については、より事務負担に考慮した対応が求められると考えるところですが、

この点については、業界団体がインボイス対応をアナウンスする手引きに対応方法が提案されています。

以下、加工食品業界のものを引用させていただきます。

返還の基となった日
加工食品流通業界におけるインボイス制度対応 ~ 「インボイス制度対応-企業間取引の手引き」 ~インボイス制度対応専門部会より引用

上記の手引きからは、Fの「販売した一定期間」の記載が実務上、最も融通が利きそうだと考えます。

しかし、この期間どの程度正確にキャッチアップするか、また数ある取引先毎にどの程度の正確性で、記載していくかということは今後引き続き検討が必要だと思われました。

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