令和6年から相続空き家の譲渡特例の改正の要点とその他母屋と離れの留意点

目次

注)本記事の内容は、記事掲載日時点の情報に基づき判断しておりますが、一若輩者の執筆であることから個別の案件での具体的な処理については責任を負いかねます旨ご理解いただきたく存じます。制度上の取扱いに言及しておりますが、個人的な見解であり、より制度深化に資すればと考えてのものです。

1.前提(令和5年度税制改正)

いわゆる空き家特例は、要件について詳細に定められているので、実務的に深く注意する必要があり、

安易な適用は要件から外れている可能性があるというのが個人的な意見です。

さて、「空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例( 措法35 ③)」(相続空き家の譲渡特例)について

令和5年度税制改正において、その内容の見直しが行われています。

国税庁は令和5年9月7日、

「『租税特別措置法(山林所得・譲渡所得関係)の取扱いについて』等の一部改正について(法令解釈通達)(令和5年8月31日付課資3-5等)」を公表しています。

2.相続空き家の譲渡特例の改正

改正の内容は、以下の通りです。

適用期限適用期限の延長(令和6年1月1日~令和9年12月31日)
控除額相続人の数が3人以上である場合の特別控除が3000万から2000万円に引き下げ
要件緩和耐震リフォーム要件耐震基準への適合が譲渡日まで→耐震基準への適合が譲渡日から譲渡日の翌年2月15日まで
除却要件譲渡日までに除却→譲渡日から譲渡日の翌年2月15日まで

3.施策・改正の背景及び趣旨

国土交通省の資料によると、相続後利用が予定されていない「その他空き家」(349万戸)は、

令和12年には約470万戸まで増加が見込まれていました。

空き家は、相続を機に発生するものが過半以上という実態があり、

空き家を早期に譲渡(有効活用)するよう相続人を後押しする必要性について指摘されてきました。

相続空き家の譲渡特例の要件については、現行制度上、「譲渡前」に売主が除却又は耐震改修の工事を実施する必要があり、

これが空き家流通上、支障となることもあったことから、今般その見直しが図られています。

国土交通省資料PDF🔗、R5.9.19訪問。

これによって、譲渡後の除却や耐震改修についても適用範囲が拡充しています。

また、控除額の相続人数における制限においては、相続空き家・土地を複数名で所有している共有財産である場合など
過度な所得税の節税を防止する観点から、相続人が3人以上の場合の特別控除は1人2,000万円を限度とすることとなっています。

4.改正に伴う適用時期の具体例図表まとめ

仮に令和3年8月に相続が発生した場合の譲渡特例の適用可否について、改正前後のスケジュールから具体例をまとめてみました。

空き家譲渡特例改正影響の具体的
空き家譲渡特例改正影響の具体的事例

5.改正と無関係の相続空き家譲渡特例の留意点

記事を作成するにあたって、個人的に留意を要すと思われる論点がありますので、記載しておきます。

母屋と離れがある場合

「相続空き家の特例」を適用するにあたっては、被相続人居住用家屋は一の建築物に限ると規定されています。

これは、被相続人の居住の用に供されていた家屋が複数の建築物からなる場合、

それらの建築物のうち、その被相続人が主としてその居住の用に供していたと認められる一の建築物のみが

被相続人居住用家屋に該当します。

その一の建築物以外の建築物は、被相続人居住用家屋に該当しないとされています(措通35-10(被相続人居住用家屋の範囲))。

このような取り扱いは他の「居住用財産を譲渡した場合の特例」と違う点注意が必要です。

また、広大な土地と居住用家屋を相続した場合に、

直前において被相続人居住用家屋と一体として利用されていた土地等について

居住用家屋の範囲の判断が実務上は難しいと思われます(措通35―13(被相続人居住用家屋の敷地等の判定等))。

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