目次
1.前提・概要
個人が寄附金を支出した場合、税務上の控除が受けられることがあります。その趣旨は、寄付行為が個人の消費ではなく、また所得の蓄積部分の減少として所得の定義から除かれることに起因するなど複数の見解があります。ともあれ個人が寄附金を支出した場合の税務上の優遇については、制度が所得税や住民税など横断的に関連するとともに、その支出の相手先によっても取り扱いが異なるため、一見し複雑で理解しにくいと思われます。
今回は、とりわけ支出の相手先を「公益財団法人」に絞ったところで、その制度上の取扱いを概観します。
2.制度内容・所得税
公益財団法人に対する寄附については、制度上所得控除と税額控除があります。所得控除制度が適用される場合は、寄附金額(総所得金額の40%が上限)から2,000円を差し引いた額が課税所得から控除されます。
また、個人が一定の要件を満たした公益財団法人へ寄附金を支出した場合は、税額控除制度の適用を受けることができ、寄附金額(総所得金額の40%が上限)から2,000円を差し引いた額の40%を所得税額から控除(所得税額の25%が上限)することができます。この税額控除制度は、所得控除制度と比較していずれか有利な方法を選択することができます。
以下、公益インフォメーションHPより画像借用

寄付額から2千円を控除したものの40%が税額控除されるため、後者の方が小口や高額所得者以外の寄附金支出者への減税効果が高いと思われます。
なお、公益財団法人が税額控除対象法人となるには、まず、所轄庁から租税特別措置法等に定められている要件(上記図参照)を満たしている旨の証明を受けるため、申請を行う必要があります。申請に基づき、所轄庁は要件を満たしていると判断した場合に、証明書を発行します。
寄付者は確定申告において、所得控除か税額控除かを有利判定することになりますが、税額控除が適用可能な法人かどうかは、その寄付先の法人が発行する受領書にその旨の記載があるかなど留意する必要があると思われます。
3制度内容・住民税
個人県民税の寄附金控除制度では、所得税の寄附金控除の対象となる寄附金のうち、地域における住民の福祉の増進に寄与するものとして県・市町村が条例で定めたものに対する寄附金を支出した場合に、個人住民税(個人県民税・個人市町村民税)から2千円を超える部分について税額控除されます。税額控除率は、都道府県指定の場合は4%、市区町村指定の場合は6%となります。(都道府県と市区町村のどちらからも指定された寄附金の場合は10%です。)
例えば、福岡県では、福岡県税条例等により、所得税の寄附金控除の対象となっている寄附金のうち、個人県民税の寄附金控除の対象として指定しています。そして、その中に福岡県内に主たる事務所を有する公益社団法人及び公益財団法人への寄附金が含まれています。当該法人の主たる目的である業務に関連する寄附金が控除の対象になります。参考:福岡県HP「1.福岡県が条例等により指定した控除対象寄附金(指定対象団体)の条件等」
ここで私見ですが、住まいの自治体が条例で指定した寄附金が対象となるということで、自分の住まう居所と寄付先の主たる事務所の所在地が異なる場合には、注意が必要です。
次に、福岡市の場合には、地域に密着した民間公益活動等を一層促進する観点から、所得税の寄附金控除の対象となる寄附金のうち、地方公共団体が条例により指定した寄附金については、個人住民税の寄附金税額控除の対象となるとあります。参考:福岡市HP「個人市民税の条例指定寄附金制度」福岡市においても福岡市市税条例により、指定を受けるための要件及びその手続を定めていますが、寄附金を受領される法人又は団体で、福岡市の指定を受ける場合には申請が必要であるようです。
市区町村の場合にも、寄付者においては、自身の住まいの条例の確認が必要であると思われます。