目次
注)本記事の内容は、記事掲載日時点の情報に基づき判断しておりますが、一若輩者の執筆であることから個別の案件での具体的な処理については責任を負いかねます旨ご理解いただきたく存じます。制度上の取扱いに言及しておりますが、個人的な見解であり、より制度深化に資すればと考えてのものです。
1.令和5年度(第73回)税理士試験について
令和5年に開催された税理士試験🔗を受験された皆様方、まずはお疲れ様でございました。
例年より猛暑の中の受験、経験した身として大変な気苦労あったと推察します。
さて、今回の受験科目において、「消費税法」の本試験問題の内容を知りました。
消費税法の出題論点を予想して出稿したわけではありませんでしたが、
図らずも本HPの最新ニュースで執筆している内容が消費税法の本試験問題の内容をかなり網羅していることを知り、嬉しく思うとともに、ぜひともご紹介したい気持ちになり、記載いたします。
その要因は、正に消費税法の出題範囲を選定する際に、最近の実務的なトレンドを意識されているからに他ならないと思います。
今回久しぶりに、受験問題を解いてみました。
愛用する電卓🔗が火を噴くところでした。
試験時間中には、強いメンタルが必要であると感じるとともに、内容は非常に実務的であるという感想を持ちました。
この記事を通じて、消費税法の勉強をされている皆様をはじめとした読者の方に日頃の実務と受験勉強がいかに密接に関連しているかをお伝え出来たら幸いです。
2課税仕入れの意義について
第1問-問1(1)「課税仕入れ」の意義を述べたうえで簡潔に説明
まさに、消費税法の本質的な論点です。
課税仕入れの意義については、以下の記事で言及しております。
記事で引用している条文は以下の条文です。
課税仕入れとは,事業者が,事業として資産を譲り受け,若しくは借り受け,又は役務の提供を受けることをいいます(消法2⑫)。
私見として、この条項は、インボイス制度導入によって、これまで以上に重要性が増しています。
特に重要な箇所は、「事業者が」「事業として」という箇所です。
これは、対の概念として「事業を行っていない」「消費者」との取引において関連してきます。
例えば、「事業を行っていない消費者」が「事業を行っている事業者」へものを売り上げた場合、
その取引にかかる消費税は、売上側と仕入側の両側面から考えていく必要があるためです。
今後、インボイス制度が始まると、さらに重要となる規定です。
3.居住用賃貸建物の意義について
消費税法のトレンドである新しい論点です。
令和2年4月に改正された内容で、
適用開始時期が令和2年10 月1日以後に行われる取引について適用されます。
そのため、直近で決算を迎えている法人などは、
すで取得等に係る仕入税額控除の制限の適用を受け始めているという感じです。
居住用賃貸建物については、以下の記事で言及しております。
事業者が、国内において行う居住用賃貸建物(住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物※1以外の建物であって高額特定資産又は調整対象自己建設高額資産※2に該当するもの)に係る課税仕入れ等の税額については、仕入税額控除の対象としないこととされました。
※1 住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物とは、建物の構造や設備等の状況により住宅の貸付けの用に供しないことが客観的に明らかなものをいい、例えば、その全てが店舗である建物など建物の設備等の状況により住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物が該当します。
私見として、実務上この領域の最も重要な箇所は、「住宅の貸し付けの用に供しない」かどうかをどのように認定・判断するのかというところです。
固定資産における「建物」において、上記に該当するかしないかで納税額に大きなインパクトを与えます。
4.食材の販売について
消費税法のトレンドである軽減税率に関する比較的新しい論点です。
食料品の譲渡については、以下の記事で言及しております。
一飲食料品(食品表示法(平成25 年法律第70 号)第2 条第1 項(定義)に規定する食品(酒税法 (昭和28 年法律第6 号)第2 条第1 項(酒類の定義及び種類)に規定する酒類を除く。以下この号 において単に「食品」という。)をいい、食品と食品以外の資産が一の資産を形成し、又は構成してい るもののうち政令で定める資産を含む。以下この号及び別表第一の二において同じ。)の譲渡(次に掲げる課税資産の譲渡等は、含まないものとする。)
イ(略)
私見として、実務上この領域の最も重要な箇所は、「食材の販売」か「食事の提供」かどうかの判断です。
5.サービス付き高齢者住宅(サ高住)の運営について
比較的新しい高齢者向け施設に関する論点です。
これについても、上述の食材に関する軽減税率と同様以下の記事で言及しております。
私見として、実務上触れる機会があったので関連領域を把握しているつもりですが、介護保険法との兼ね合いがあいまいな受験生の立場に立つと結構酷な箇所かもしれません。
6.所有権移転外ファイナンス・リースのリース料について
ちょっと私が記載している論点とはズレますが、かすっているということで。
これについては、以下の記事で言及しております。
所有権移転外ファイナンス・リース取引における中途解約(違約金支払)時の消費税の考え方 | 池田一暁公認会計士事務所 (ikeda-jicpa.com)
所有権移転外リース取引については、資産の譲渡として取り扱われ、消費税の仕入税額控除の時期は、課税仕入れを行った日の属する課税期間において控除するのが原則です。
しかしながら、事業者の経理実務を考慮して消費税の仕入税額控除の時期については、会計基準に基づいた経理処理を踏まえ、経理実務の簡便性という観点から、賃借人が賃貸借処理をしている場合には、分割控除を行っても差し支えないこととされています。
分割控除により仕入税額控除を行っている移転外リース取引が解約された場合には、解約以降は賃貸借処理がされなくなることから、分割控除による仕入税額控除は認められません。
一方で、残存リース料は、本来的にリース資産の譲受け対価を構成し、当然に仕入税額控除の対象となるべきものであるため、当該残存リース料は解約した日の属する課税期間における仕入税額控除の対象となります。
7.不動産業(賃貸・販売・仲介等)を営む法人について
この論点は、最近の消費税のトレンドであるとともに、重点的に言及してきている箇所です。
これについては、とくに以下の記事で言及しております。
インボイス制度が不動産業者・中小企業に与える影響について | 池田一暁公認会計士事務所 (ikeda-jicpa.com)
個別対応方式における用途区分の判定時期についての考察 | 池田一暁公認会計士事務所 (ikeda-jicpa.com)
調整対象固定資産に係る調整税額についての計算はややマニアック感があります。
8.まとめ
第73回税理士試験の消費税法において出題された論点と本ホームページの各記事の関連について記載してきました。
率直な感想として、税理士試験のレベルの高さや実務との関連性について驚いています。
まさに、この出題範囲を把握していたらすぐにでも実務に直結すると思いました。
私は、必要性に駆られることが、税法を学ぶ動機となっていますが、
受験勉強として学ぶモチベーションが起こらないと悩む方に、勉強で身についた知識は即座に実務に応用できると伝えたいと願っています。